\id LUK \h ルカの福音書 \toc1 ルカの福音書 \toc2 ルカの福音書 \toc3 ルカの福音書 \mt1 ルカの福音書 \c 1 \p \v 1-2 私たちの間ですでに確信されている出来事については、初めからの目撃者で、みことばに仕える者となった人々が、私たちに伝えたそのとおりを、多くの人が記事にまとめて書き上げようと、すでに試みておりますので、 \v 3 私も、すべてのことを初めから綿密に調べておりますから、あなたのために、順序を立てて書いて差し上げるのがよいと思います。尊敬するテオピロ殿。 \v 4 それによって、すでに教えを受けられた事がらが正確な事実であることを、よくわかっていただきたいと存じます。 \p \v 5 ユダヤの王ヘロデの時に、アビヤの組の者でザカリヤという祭司がいた。彼の妻はアロンの子孫で、名をエリサベツといった。 \v 6 ふたりとも、神の御前に正しく、主のすべての戒めと定めを落度なく踏み行なっていた。 \v 7 エリサベツは不妊の女だったので、彼らには子がなく、ふたりとももう年をとっていた。 \p \v 8 さて、ザカリヤは、自分の組が当番で、神の御前に祭司の務めをしていたが、 \v 9 祭司職の習慣によって、くじを引いたところ、主の神殿にはいって香をたくことになった。 \v 10 彼が香をたく間、大ぜいの民はみな、外で祈っていた。 \v 11 ところが、主の使いが彼に現われて、香壇の右に立った。 \v 12 これを見たザカリヤは不安を覚え、恐怖に襲われたが、 \v 13 御使いは彼に言った。「こわがることはない。ザカリヤ。あなたの願いが聞かれたのです。あなたの妻エリサベツは男の子を産みます。名をヨハネとつけなさい。 \v 14 その子はあなたにとって喜びとなり楽しみとなり、多くの人もその誕生を喜びます。 \v 15 彼は主の御前にすぐれた者となるからです。彼は、ぶどう酒も強い酒も飲まず、まだ母の胎内にあるときから聖霊に満たされ、 \v 16 そしてイスラエルの多くの子らを、彼らの神である主に立ち返らせます。 \v 17 彼こそ、エリヤの霊と力で主の前ぶれをし、父たちの心を子どもたちに向けさせ、逆らう者を義人の心に立ち戻らせ、こうして、整えられた民を主のために用意するのです。」 \v 18 そこで、ザカリヤは御使いに言った。「私は何によってそれを知ることができましょうか。私ももう年寄りですし、妻も年をとっております。」 \v 19 御使いは答えて言った。「私は神の御前に立つガブリエルです。あなたに話をし、この喜びのおとずれを伝えるように遣わされているのです。 \v 20 ですから、見なさい。これらのことが起こる日までは、あなたは、おしになって、ものが言えなくなります。私のことばを信じなかったからです。私のことばは、その時が来れば実現します。」 \v 21 人々はザカリヤを待っていたが、神殿であまり暇取るので不思議に思った。 \v 22 やがて彼は出て来たが、人々に話をすることができなかった。それで、彼は神殿で幻を見たのだとわかった。ザカリヤは、彼らに合図を続けるだけで、おしのままであった。 \v 23 やがて、務めの期間が終わったので、彼は自分の家に帰った。 \p \v 24 その後、妻エリサベツはみごもり、五か月の間引きこもって、こう言った。 \v 25 「主は、人中で私の恥を取り除こうと心にかけられ、今、私をこのようにしてくださいました。」 \p \v 26 ところで、その六か月目に、御使いガブリエルが、神から遣わされてガリラヤのナザレという町のひとりの処女のところに来た。 \v 27 この処女は、ダビデの家系のヨセフという人のいいなずけで、名をマリヤといった。 \v 28 御使いは、はいって来ると、マリヤに言った。「おめでとう、恵まれた方。主があなたとともにおられます。」 \v 29 しかし、マリヤはこのことばに、ひどくとまどって、これはいったい何のあいさつかと考え込んだ。 \v 30 すると御使いが言った。「こわがることはない。マリヤ。あなたは神から恵みを受けたのです。 \v 31 ご覧なさい。あなたはみごもって、男の子を産みます。名をイエスとつけなさい。 \v 32 その子はすぐれた者となり、いと高き方の子と呼ばれます。また、神である主は彼にその父ダビデの王位をお与えになります。 \v 33 彼はとこしえにヤコブの家を治め、その国は終わることがありません。」 \v 34 そこで、マリヤは御使いに言った。「どうしてそのようなことになりえましょう。私はまだ男の人を知りませんのに。」 \v 35 御使いは答えて言った。「聖霊があなたの上に臨み、いと高き方の力があなたをおおいます。それゆえ、生まれる者は、聖なる者、神の子と呼ばれます。 \v 36 ご覧なさい。あなたの親類のエリサベツも、あの年になって男の子を宿しています。不妊の女といわれていた人なのに、今はもう六か月です。 \v 37 神にとって不可能なことは一つもありません。」 \v 38 マリヤは言った。「ほんとうに、私は主のはしためです。どうぞ、あなたのおことばどおりこの身になりますように。」こうして御使いは彼女から去って行った。 \p \v 39 そのころ、マリヤは立って、山地にあるユダの町に急いだ。 \v 40 そしてザカリヤの家に行って、エリサベツにあいさつした。 \v 41 エリサベツがマリヤのあいさつを聞いたとき、子が胎内でおどり、エリサベツは聖霊に満たされた。 \v 42 そして大声をあげて言った。「あなたは女の中の祝福された方。あなたの胎の実も祝福されています。 \v 43 私の主の母が私のところに来られるとは、何ということでしょう。 \v 44 ほんとうに、あなたのあいさつの声が私の耳にはいったとき、私の胎内で子どもが喜んでおどりました。 \v 45 主によって語られたことは必ず実現すると信じきった人は、何と幸いなことでしょう。」 \v 46 マリヤは言った。 \mi 「わがたましいは主をあがめ、 \mi \v 47 わが霊は、わが救い主なる神を喜びたたえます。 \mi \v 48 主はこの卑しいはしために \mi 目を留めてくださったからです。 \mi ほんとうに、これから後、どの時代の人々も、 \mi 私をしあわせ者と思うでしょう。 \mi \v 49 力ある方が、 \mi 私に大きなことをしてくださいました。 \mi その御名はきよく、 \mi \v 50 そのあわれみは、主を恐れかしこむ者に、 \mi 代々にわたって及びます。 \mi \v 51 主は、御腕をもって力強いわざをなし、 \mi 心の思いの高ぶっている者を追い散らし、 \mi \v 52 権力ある者を王位から引き降ろされます。 \mi 低い者を高く引き上げ、 \mi \v 53 飢えた者を良いもので満ち足らせ、 \mi 富む者を何も持たせないで追い返されました。 \mi \v 54 主はそのあわれみをいつまでも忘れないで、 \mi そのしもべイスラエルをお助けになりました。 \mi \v 55 私たちの先祖たち、アブラハムとその子孫に \mi 語られたとおりです。」 \b \p \v 56 マリヤは三か月ほどエリサベツと暮らして、家に帰った。 \p \v 57 さて月が満ちて、エリサベツは男の子を産んだ。 \v 58 近所の人々や親族は、主がエリサベツに大きなあわれみをおかけになったと聞いて、彼女とともに喜んだ。 \v 59 さて八日目に、人々は幼子に割礼するためにやって来て、幼子を父の名にちなんでザカリヤと名づけようとしたが、 \v 60 母は答えて、「いいえ、そうではなくて、ヨハネという名にしなければなりません。」と言った。 \v 61 彼らは彼女に、「あなたの親族にはそのような名の人はひとりもいません。」と言った。 \v 62 そして、身振りで父親に合図して、幼子に何という名をつけるつもりかと尋ねた。 \v 63 すると、彼は書き板を持って来させて、「彼の名はヨハネ。」と書いたので、人々はみな驚いた。 \v 64 すると、たちどころに、彼の口が開け、舌は解け、ものが言えるようになって神をほめたたえた。 \v 65 そして、近所の人々はみな恐れた。さらにこれらのことの一部始終が、ユダヤの山地全体にも語り伝えられて行った。 \v 66 聞いた人々はみな、それを心にとどめて、「いったいこの子は何になるのでしょう。」と言った。主の御手が彼とともにあったからである。 \p \v 67 さて父ザカリヤは、聖霊に満たされて、預言して言った。 \mi \v 68 「ほめたたえよ。イスラエルの神である主を。 \mi 主はその民を顧みて、贖いをなし、 \mi \v 69 救いの角を、われらのために、 \mi しもべダビデの家に立てられた。 \mi \v 70 古くから、その聖なる預言者たちの口を通して、 \mi 主が話してくださったとおりに。 \mi \v 71 この救いはわれらの敵からの、 \mi すべてわれらを憎む者の手からの救いである。 \mi \v 72 主はわれらの父祖たちにあわれみを施し、 \mi その聖なる契約を、 \mi \v 73 われらの父アブラハムに誓われた誓いを覚えて、 \mi \v 74-75 われらを敵の手から救い出し、 \mi われらの生涯のすべての日に、 \mi きよく、正しく、 \mi 恐れなく、主の御前に仕えることを許される。 \mi \v 76 幼子よ。あなたもまた、 \mi いと高き方の預言者と呼ばれよう。 \mi 主の御前に先立って行き、その道を備え、 \mi \v 77 神の民に、罪の赦しによる \mi 救いの知識を与えるためである。 \mi \v 78 これはわれらの神の深いあわれみによる。 \mi そのあわれみにより、 \mi 日の出がいと高き所からわれらを訪れ、 \mi \v 79 暗黒と死の陰にすわる者たちを照らし、 \mi われらの足を平和の道に導く。」 \b \p \v 80 さて、幼子は成長し、その霊は強くなり、イスラエルの民の前に公に出現する日まで荒野にいた。 \c 2 \p \v 1 そのころ、全世界の住民登録をせよという勅令が、皇帝アウグストから出た。 \v 2 これは、クレニオがシリヤの総督であったときの最初の住民登録であった。 \v 3 それで、人々はみな、登録のために、それぞれ自分の町に向かって行った。 \v 4 ヨセフもガリラヤの町ナザレから、ユダヤのベツレヘムというダビデの町へ上って行った。彼は、ダビデの家系であり血筋でもあったので、 \v 5 身重になっているいいなずけの妻マリヤもいっしょに登録するためであった。 \v 6 ところが、彼らがそこにいる間に、マリヤは月が満ちて、 \v 7 男子の初子を産んだ。それで、布にくるんで、飼葉おけに寝かせた。宿屋には彼らのいる場所がなかったからである。 \p \v 8 さて、この土地に、羊飼いたちが、野宿で夜番をしながら羊の群れを見守っていた。 \v 9 すると、主の使いが彼らのところに来て、主の栄光が回りを照らしたので、彼らはひどく恐れた。 \v 10 御使いは彼らに言った。「恐れることはありません。今、私はこの民全体のためのすばらしい喜びを知らせに来たのです。 \v 11 きょうダビデの町で、あなたがたのために、救い主がお生まれになりました。この方こそ主キリストです。 \v 12 あなたがたは、布にくるまって飼葉おけに寝ておられるみどりごを見つけます。これが、あなたがたのためのしるしです。」 \v 13 すると、たちまち、その御使いといっしょに、多くの天の軍勢が現われて、神を賛美して言った。 \mi \v 14 「いと高き所に、栄光が、神にあるように。 \mi 地の上に、平和が、 \mi 御心にかなう人々にあるように。」 \mi \v 15 御使いたちが彼らを離れて天に帰ったとき、羊飼いたちは互いに話し合った。「さあ、ベツレヘムに行って、主が私たちに知らせてくださったこの出来事を見て来よう。」 \v 16 そして急いで行って、マリヤとヨセフと、飼葉おけに寝ておられるみどりごとを捜し当てた。 \v 17 それを見たとき、羊飼いたちは、この幼子について告げられたことを知らせた。 \v 18 それを聞いた人たちはみな、羊飼いの話したことに驚いた。 \v 19 しかしマリヤは、これらのことをすべて心に納めて、思いを巡らしていた。 \v 20 羊飼いたちは、見聞きしたことが、全部御使いの話のとおりだったので、神をあがめ、賛美しながら帰って行った。 \p \v 21 八日が満ちて幼子に割礼を施す日となり、幼子はイエスという名で呼ばれることになった。胎内に宿る前に御使いがつけた名である。 \p \v 22 さて、モーセの律法による彼らのきよめの期間が満ちたとき、両親は幼子を主にささげるために、エルサレムへ連れて行った。 \v 23 ――それは、主の律法に「母の胎を開く男子の初子は、すべて、主に聖別された者、と呼ばれなければならない。」と書いてあるとおりであった。―― \v 24 また、主の律法に「山ばと一つがい、または、家ばとのひな二羽。」と定められたところに従って犠牲をささげるためであった。 \v 25 そのとき、エルサレムにシメオンという人がいた。この人は正しい、敬虔な人で、イスラエルの慰められることを待ち望んでいた。聖霊が彼の上にとどまっておられた。 \v 26 また、主のキリストを見るまでは、決して死なないと、聖霊のお告げを受けていた。 \v 27 彼が御霊に感じて宮にはいると、幼子イエスを連れた両親が、その子のために律法の慣習を守るために、はいって来た。 \v 28 すると、シメオンは幼子を腕に抱き、神をほめたたえて言った。 \mi \v 29 「主よ。今こそあなたは、あなたのしもべを、 \mi みことばどおり、安らかに去らせてくださいます。 \mi \v 30 私の目があなたの御救いを見たからです。 \mi \v 31 御救いはあなたが \mi 万民の前に備えられたもので、 \mi \v 32 異邦人を照らす啓示の光、 \mi 御民イスラエルの光栄です。」 \mi \v 33 父と母は、幼子についていろいろ語られる事に驚いた。 \v 34 また、シメオンは両親を祝福し、母マリヤに言った。「ご覧なさい。この子は、イスラエルの多くの人が倒れ、また、立ち上がるために定められ、また、反対を受けるしるしとして定められています。 \v 35 剣があなたの心さえも刺し貫くでしょう。それは多くの人の心の思いが現われるためです。」 \v 36 また、アセル族のパヌエルの娘で女預言者のアンナという人がいた。この人は非常に年をとっていた。処女の時代のあと七年間、夫とともに住み、 \v 37 その後やもめになり、八十四歳になっていた。そして宮を離れず、夜も昼も、断食と祈りをもって神に仕えていた。 \v 38 ちょうどこのとき、彼女もそこにいて、神に感謝をささげ、そして、エルサレムの贖いを待ち望んでいるすべての人々に、この幼子のことを語った。 \p \v 39 さて、彼らは主の律法による定めをすべて果たしたので、ガリラヤの自分たちの町ナザレに帰った。 \v 40 幼子は成長し、強くなり、知恵に満ちて行った。神の恵みがその上にあった。 \p \v 41 さて、イエスの両親は、過越の祭りには毎年エルサレムに行った。 \v 42 イエスが十二歳になられたときも、両親は祭りの慣習に従って都へ上り、 \v 43 祭りの期間を過ごしてから、帰路についたが、少年イエスはエルサレムにとどまっておられた。両親はそれに気づかなかった。 \v 44 イエスが一行の中にいるものと思って、一日の道のりを行った。それから、親族や知人の中を捜し回ったが、 \v 45 見つからなかったので、イエスを捜しながら、エルサレムまで引き返した。 \v 46 そしてようやく三日の後に、イエスが宮で教師たちの真中にすわって、話を聞いたり質問したりしておられるのを見つけた。 \v 47 聞いていた人々はみな、イエスの知恵と答えに驚いていた。 \v 48 両親は彼を見て驚き、母は言った。「まあ、あなたはなぜ私たちにこんなことをしたのです。見なさい。父上も私も、心配してあなたを捜し回っていたのです。」 \v 49 するとイエスは両親に言われた。「どうしてわたしをお捜しになったのですか。わたしが必ず自分の父の家にいることを、ご存じなかったのですか。」 \v 50 しかし両親には、イエスの話されたことばの意味がわからなかった。 \v 51 それからイエスは、いっしょに下って行かれ、ナザレに帰って、両親に仕えられた。母はこれらのことをみな、心に留めておいた。 \p \v 52 イエスはますます知恵が進み、背たけも大きくなり、神と人とに愛された。 \c 3 \p \v 1 皇帝テベリオの治世の第十五年、ポンテオ・ピラトがユダヤの総督、ヘロデがガリラヤの国主、その兄弟ピリポがイツリヤとテラコニテ地方の国主、ルサニヤがアビレネの国主であり、 \v 2 アンナスとカヤパが大祭司であったころ、神のことばが、荒野でザカリヤの子ヨハネに下った。 \v 3 そこでヨハネは、ヨルダン川のほとりのすべての地方に行って、罪が赦されるための悔い改めに基づくバプテスマを説いた。 \v 4 そのことは預言者イザヤのことばの書に書いてあるとおりである。 \mi 「荒野で叫ぶ者の声がする。 \mi 『主の道を用意し、 \mi 主の通られる道をまっすぐにせよ。 \mi \v 5 すべての谷はうずめられ、 \mi すべての山と丘とは低くされ、 \mi 曲がった所はまっすぐになり、 \mi でこぼこ道は平らになる。 \mi \v 6 こうして、あらゆる人が、 \mi 神の救いを見るようになる。』」 \b \p \v 7 それで、ヨハネは、彼からバプテスマを受けようとして出て来た群衆に言った。「まむしのすえたち。だれが必ず来る御怒りをのがれるように教えたのか。 \v 8 それならそれで、悔い改めにふさわしい実を結びなさい。『われわれの先祖はアブラハムだ。』などと心の中で言い始めてはいけません。よく言っておくが、神は、こんな石ころからでも、アブラハムの子孫を起こすことがおできになるのです。 \v 9 斧もすでに木の根元に置かれています。だから、良い実を結ばない木は、みな切り倒されて、火に投げ込まれます。」 \v 10 群衆はヨハネに尋ねた。「それでは、私たちはどうすればよいのでしょう。」 \v 11 彼は答えて言った。「下着を二枚持っている者は、一つも持たない者に分けなさい。食べ物を持っている者も、そうしなさい。」 \v 12 取税人たちも、バプテスマを受けに出て来て、言った。「先生。私たちはどうすればよいのでしょう。」 \v 13 ヨハネは彼らに言った。「決められたもの以上には、何も取り立ててはいけません。」 \v 14 兵士たちも、彼に尋ねて言った。「私たちはどうすればよいのでしょうか。」ヨハネは言った。「だれからも、力ずくで金をゆすったり、無実の者を責めたりしてはいけません。自分の給料で満足しなさい。」 \p \v 15 民衆は救い主を待ち望んでおり、みな心の中で、ヨハネについて、もしかするとこの方がキリストではあるまいか、と考えていたので、 \v 16 ヨハネはみなに答えて言った。「私は水であなたがたにバプテスマを授けています。しかし、私よりもさらに力のある方がおいでになります。私などは、その方のくつのひもを解く値うちもありません。その方は、あなたがたに聖霊と火とのバプテスマをお授けになります。 \v 17 また手に箕を持って脱穀場をことごとくきよめ、麦を倉に納め、殻を消えない火で焼き尽くされます。」 \p \v 18 ヨハネは、そのほかにも多くのことを教えて、民衆に福音を知らせた。 \v 19 さて国主ヘロデは、その兄弟の妻ヘロデヤのことについて、また、自分の行なった悪事のすべてを、ヨハネに責められたので、 \v 20 ヨハネを牢に閉じ込め、すべての悪事にもう一つこの悪事を加えた。 \p \v 21 さて、民衆がみなバプテスマを受けていたころ、イエスもバプテスマをお受けになり、そして祈っておられると、天が開け、 \v 22 聖霊が、鳩のような形をして、自分の上に下られるのをご覧になった。また、天から声がした。「あなたは、わたしの愛する子、わたしはあなたを喜ぶ。」 \p \v 23 教えを始められたとき、イエスはおよそ三十歳で、人々からヨセフの子と思われていた。このヨセフは、ヘリの子、順次さかのぼって、 \v 24 マタテの子、レビの子、メルキの子、ヤンナイの子、ヨセフの子、 \v 25 マタテヤの子、アモスの子、ナホムの子、エスリの子、ナンガイの子、 \v 26 マハテの子、マタテヤの子、シメイの子、ヨセクの子、ヨダの子、 \v 27 ヨハナンの子、レサの子、ゾロバベルの子、サラテルの子、ネリの子、 \v 28 メルキの子、アデイの子、コサムの子、エルマダムの子、エルの子、 \v 29 ヨシュアの子、エリエゼルの子、ヨリムの子、マタテの子、レビの子、 \v 30 シメオンの子、ユダの子、ヨセフの子、ヨナムの子、エリヤキムの子、 \v 31 メレヤの子、メナの子、マタタの子、ナタンの子、ダビデの子、 \v 32 エッサイの子、オベデの子、ボアズの子、サラの子、ナアソンの子、 \v 33 アミナダブの子、アデミンの子、アルニの子、エスロンの子、パレスの子、ユダの子、 \v 34 ヤコブの子、イサクの子、アブラハムの子、テラの子、ナホルの子、 \v 35 セルグの子、レウの子、ペレグの子、エベルの子、サラの子、 \v 36 カイナンの子、アルパクサデの子、セムの子、ノアの子、ラメクの子、 \v 37 メトセラの子、エノクの子、ヤレデの子、マハラレルの子、カイナンの子、 \v 38 エノスの子、セツの子、アダムの子、このアダムは神の子である。 \c 4 \p \v 1 さて、聖霊に満ちたイエスは、ヨルダンから帰られた。そして御霊に導かれて荒野におり、 \v 2 四十日間、悪魔の試みに会われた。その間何も食べず、その時が終わると、空腹を覚えられた。 \v 3 そこで、悪魔はイエスに言った。「あなたが神の子なら、この石に、パンになれと言いつけなさい。」 \v 4 イエスは答えられた。「『人はパンだけで生きるのではない。』と書いてある。」 \v 5 また、悪魔はイエスを連れて行き、またたくまに世界の国々を全部見せて、 \v 6 こう言った。「この、国々のいっさいの権力と栄光とをあなたに差し上げましょう。それは私に任されているので、私がこれと思う人に差し上げるのです。 \v 7 ですから、もしあなたが私を拝むなら、すべてをあなたのものとしましょう。」 \v 8 イエスは答えて言われた。「『あなたの神である主を拝み、主にだけ仕えなさい。』と書いてある。」 \v 9 また、悪魔はイエスをエルサレムに連れて行き、神殿の頂に立たせて、こう言った。「あなたが神の子なら、ここから飛び降りなさい。 \v 10 『神は、御使いたちに命じてあなたを守らせる。』とも、 \v 11 『あなたの足が石に打ち当たることのないように、彼らの手で、あなたをささえさせる。』とも書いてあるからです。」 \v 12 するとイエスは答えて言われた。「『あなたの神である主を試みてはならない。』と言われている。」 \p \v 13 誘惑の手を尽くしたあとで、悪魔はしばらくの間イエスから離れた。 \p \v 14 イエスは御霊の力を帯びてガリラヤに帰られた。すると、その評判が回り一帯に、くまなく広まった。 \v 15 イエスは、彼らの会堂で教え、みなの人にあがめられた。 \p \v 16 それから、イエスはご自分の育ったナザレに行き、いつものとおり安息日に会堂にはいり、朗読しようとして立たれた。 \v 17 すると、預言者イザヤの書が手渡されたので、その書を開いて、こう書いてある所を見つけられた。 \mi \v 18 「わたしの上に主の御霊がおられる。 \mi 主が、貧しい人々に福音を伝えるようにと、 \mi わたしに油を注がれたのだから。 \mi 主はわたしを遣わされた。 \mi 捕われ人には赦免を、 \mi 盲人には目の開かれることを告げるために。 \mi しいたげられている人々を自由にし、 \mi \v 19 主の恵みの年を告げ知らせるために。」 \mi \v 20 イエスは書を巻き、係りの者に渡してすわられた。会堂にいるみなの目がイエスに注がれた。 \v 21 イエスは人々にこう言って話し始められた。「きょう、聖書のこのみことばが、あなたがたが聞いたとおり実現しました。」 \v 22 みなイエスをほめ、その口から出て来る恵みのことばに驚いた。そしてまた、「この人は、ヨセフの子ではないか。」と彼らは言った。 \v 23 イエスは言われた。「きっとあなたがたは、『医者よ。自分を直せ。』というたとえを引いて、カペナウムで行なわれたと聞いていることを、あなたの郷里のここでもしてくれ、と言うでしょう。」 \v 24 また、こう言われた。「まことに、あなたがたに告げます。預言者はだれでも、自分の郷里では歓迎されません。 \v 25 わたしが言うのは真実のことです。エリヤの時代に、三年六か月の間天が閉じて、全国に大ききんが起こったとき、イスラエルにもやもめは多くいたが、 \v 26 エリヤはだれのところにも遣わされず、シドンのサレプタにいたやもめ女にだけ遣わされたのです。 \v 27 また、預言者エリシャのときに、イスラエルには、らい病人がたくさんいたが、そのうちのだれもきよめられないで、シリヤ人ナアマンだけがきよめられました。」 \v 28 これらのことを聞くと、会堂にいた人たちはみな、ひどく怒り、 \v 29 立ち上がってイエスを町の外に追い出し、町が立っていた丘のがけのふちまで連れて行き、そこから投げ落とそうとした。 \v 30 しかしイエスは、彼らの真中を通り抜けて、行ってしまわれた。 \p \v 31 それからイエスは、ガリラヤの町カペナウムに下られた。そして、安息日ごとに、人々を教えられた。 \v 32 人々は、その教えに驚いた。そのことばに権威があったからである。 \v 33 また、会堂に、汚れた悪霊につかれた人がいて、大声でわめいた。 \v 34 「ああ、ナザレ人のイエス。いったい私たちに何をしようというのです。あなたは私たちを滅ぼしに来たのでしょう。私はあなたがどなたか知っています。神の聖者です。」 \v 35 イエスは彼をしかって、「黙れ。その人から出て行け。」と言われた。するとその悪霊は人々の真中で、その人を投げ倒して出て行ったが、その人は別に何の害も受けなかった。 \v 36 人々はみな驚いて、互いに話し合った。「今のおことばはどうだ。権威と力とでお命じになったので、汚れた霊でも出て行ったのだ。」 \v 37 こうしてイエスのうわさは、回りの地方の至る所に広まった。 \p \v 38 イエスは立ち上がって会堂を出て、シモンの家にはいられた。すると、シモンのしゅうとめが、ひどい熱で苦しんでいた。人々は彼女のためにイエスにお願いした。 \v 39 イエスがその枕もとに来て、熱をしかりつけられると、熱がひき、彼女はすぐに立ち上がって彼らをもてなし始めた。 \p \v 40 日が暮れると、いろいろな病気で弱っている者をかかえた人たちがみな、その病人をみもとに連れて来た。イエスは、ひとりひとりに手を置いて、いやされた。 \v 41 また、悪霊どもも、「あなたこそ神の子です。」と大声で叫びながら、多くの人から出て行った。イエスは、悪霊どもをしかって、ものを言うのをお許しにならなかった。彼らはイエスがキリストであることを知っていたからである。 \p \v 42 朝になって、イエスは寂しい所に出て行かれた。群衆は、イエスを捜し回って、みもとに来ると、イエスが自分たちから離れて行かないよう引き止めておこうとした。 \v 43 しかしイエスは、彼らにこう言われた。「ほかの町々にも、どうしても神の国の福音を宣べ伝えなければなりません。わたしは、そのために遣わされたのですから。」 \p \v 44 そしてユダヤの諸会堂で、福音を告げ知らせておられた。 \c 5 \p \v 1 群衆がイエスに押し迫るようにして神のことばを聞いたとき、イエスはゲネサレ湖の岸べに立っておられたが、 \v 2 岸べに小舟が二そうあるのをご覧になった。漁師たちは、その舟から降りて網を洗っていた。 \v 3 イエスは、そのうちの一つの、シモンの持ち舟に乗り、陸から少し漕ぎ出すように頼まれた。そしてイエスはすわって、舟から群衆を教えられた。 \v 4 話が終わると、シモンに、「深みに漕ぎ出して、網をおろして魚をとりなさい。」と言われた。 \v 5 するとシモンが答えて言った。「先生。私たちは、夜通し働きましたが、何一つとれませんでした。でもおことばどおり、網をおろしてみましょう。」 \v 6 そして、そのとおりにすると、たくさんの魚がはいり、網は破れそうになった。 \v 7 そこで別の舟にいた仲間の者たちに合図をして、助けに来てくれるように頼んだ。彼らがやって来て、そして魚を両方の舟いっぱいに上げたところ、二そうとも沈みそうになった。 \v 8 これを見たシモン・ペテロは、イエスの足もとにひれ伏して、「主よ。私のような者から離れてください。私は、罪深い人間ですから。」と言った。 \v 9 それは、大漁のため、彼もいっしょにいたみなの者も、ひどく驚いたからである。 \v 10 シモンの仲間であったゼベダイの子ヤコブやヨハネも同じであった。イエスはシモンにこう言われた。「こわがらなくてもよい。これから後、あなたは人間をとるようになるのです。」 \v 11 彼らは、舟を陸に着けると、何もかも捨てて、イエスに従った。 \p \v 12 さて、イエスがある町におられたとき、全身らい病の人がいた。イエスを見ると、ひれ伏してお願いした。「主よ。お心一つで、私はきよくしていただけます。」 \v 13 イエスは手を伸ばして、彼にさわり、「わたしの心だ。きよくなれ。」と言われた。すると、すぐに、そのらい病が消えた。 \v 14 イエスは、彼にこう命じられた。「だれにも話してはいけない。ただ祭司のところに行って、自分を見せなさい。そして人々へのあかしのため、モーセが命じたように、あなたのきよめの供え物をしなさい。」 \v 15 しかし、イエスのうわさは、ますます広まり、多くの人の群れが、話を聞きに、また、病気を直してもらいに集まって来た。 \v 16 しかし、イエスご自身は、よく荒野に退いて祈っておられた。 \p \v 17 ある日のこと、イエスが教えておられると、パリサイ人と律法の教師たちも、そこにすわっていた。彼らは、ガリラヤとユダヤとのすべての村々や、エルサレムから来ていた。イエスは、主の御力をもって、病気を直しておられた。 \v 18 するとそこに、男たちが、中風をわずらっている人を、床のままで運んで来た。そして、何とかして家の中に運び込み、イエスの前に置こうとしていた。 \v 19 しかし、大ぜい人がいて、どうにも病人を運び込む方法が見つからないので、屋上に上って屋根の瓦をはがし、そこから彼の寝床を、ちょうど人々の真中のイエスの前に、つり降ろした。 \v 20 彼らの信仰を見て、イエスは「友よ。あなたの罪は赦されました。」と言われた。 \v 21 ところが、律法学者、パリサイ人たちは、理屈を言い始めた。「神をけがすことを言うこの人は、いったい何者だ。神のほかに、だれが罪を赦すことができよう。」 \v 22 その理屈を見抜いておられたイエスは、彼らに言われた。「なぜ、心の中でそんな理屈を言っているのか。 \v 23 『あなたの罪は赦された。』と言うのと、『起きて歩け。』と言うのと、どちらがやさしいか。 \v 24 人の子が地上で罪を赦す権威を持っていることを、あなたがたに悟らせるために。」と言って、中風の人に、「あなたに命じる。起きなさい。寝床をたたんで、家に帰りなさい。」と言われた。 \v 25 すると彼は、たちどころに人々の前で立ち上がり、寝ていた床をたたんで、神をあがめながら自分の家に帰った。 \v 26 人々はみな、ひどく驚き、神をあがめ、恐れに満たされて、「私たちは、きょう、驚くべきことを見た。」と言った。 \v 27 この後、イエスは出て行き、収税所にすわっているレビという取税人に目を留めて、「わたしについて来なさい。」と言われた。 \v 28 するとレビは、何もかも捨て、立ち上がってイエスに従った。 \p \v 29 そこでレビは、自分の家でイエスのために大ぶるまいをしたが、取税人たちや、ほかに大ぜいの人たちが食卓に着いていた。 \v 30 すると、パリサイ人やその派の律法学者たちが、イエスの弟子たちに向かって、つぶやいて言った。「なぜ、あなたがたは、取税人や罪人どもといっしょに飲み食いするのですか。」 \v 31 そこで、イエスは答えて言われた。「医者を必要とするのは丈夫な者ではなく、病人です。 \v 32 わたしは正しい人を招くためではなく、罪人を招いて、悔い改めさせるために来たのです。」 \p \v 33 彼らはイエスに言った。「ヨハネの弟子たちは、よく断食をしており、祈りもしています。また、パリサイ人の弟子たちも同じなのに、あなたの弟子たちは食べたり飲んだりしています。」 \v 34 イエスは彼らに言われた。「花婿がいっしょにいるのに、花婿につき添う友だちに断食させることが、あなたがたにできますか。 \v 35 しかし、やがてその時が来て、花婿が取り去られたら、その日には彼らは断食します。」 \v 36 イエスはまた一つのたとえを彼らに話された。「だれも、新しい着物から布切れを引き裂いて、古い着物に継ぎをするようなことはしません。そんなことをすれば、その新しい着物を裂くことになるし、また新しいのを引き裂いた継ぎ切れも、古い物には合わないのです。 \v 37 また、だれも新しいぶどう酒を古い皮袋に入れるようなことはしません。そんなことをすれば、新しいぶどう酒は皮袋を張り裂き、ぶどう酒は流れ出て、皮袋もだめになってしまいます。 \v 38 新しいぶどう酒は新しい皮袋に入れなければなりません。 \v 39 また、だれでも古いぶどう酒を飲んでから、新しい物を望みはしません。『古い物は良い。』と言うのです。」 \c 6 \p \v 1 ある安息日に、イエスが麦畑を通っておられたとき、弟子たちは麦の穂を摘んで、手でもみ出しては食べていた。 \v 2 すると、あるパリサイ人たちが言った。「なぜ、あなたがたは、安息日にしてはならないことをするのですか。」 \v 3 イエスは彼らに答えて言われた。「あなたがたは、ダビデが連れの者といっしょにいて、ひもじかったときにしたことを読まなかったのですか。 \v 4 ダビデは神の家にはいって、祭司以外の者はだれも食べてはならない供えのパンを取って、自分も食べたし、供の者にも与えたではありませんか。」 \v 5 そして、彼らに言われた。「人の子は、安息日の主です。」 \p \v 6 別の安息日に、イエスは会堂にはいって教えておられた。そこに右手のなえた人がいた。 \v 7 そこで律法学者、パリサイ人たちは、イエスが安息日に人を直すかどうか、じっと見ていた。彼を訴える口実を見つけるためであった。 \v 8 イエスは彼らの考えをよく知っておられた。それで、手のなえた人に、「立って、真中に出なさい。」と言われた。その人は、起き上がって、そこに立った。 \v 9 イエスは人々に言われた。「あなたがたに聞きますが、安息日にしてよいのは、善を行なうことなのか、それとも悪を行なうことなのか。いのちを救うことなのか、それとも失うことなのか、どうですか。」 \v 10 そして、みなの者を見回してから、その人に、「手を伸ばしなさい。」と言われた。そのとおりにすると、彼の手は元どおりになった。 \v 11 すると彼らはすっかり分別を失ってしまって、イエスをどうしてやろうかと話し合った。 \p \v 12 このころ、イエスは祈るために山に行き、神に祈りながら夜を明かされた。 \v 13 夜明けになって、弟子たちを呼び寄せ、その中から十二人を選び、彼らに使徒という名をつけられた。 \v 14 すなわち、ペテロという名をいただいたシモンとその兄弟アンデレ、ヤコブとヨハネ、ピリポとバルトロマイ、 \v 15 マタイとトマス、アルパヨの子ヤコブと熱心党員と呼ばれるシモン、 \v 16 ヤコブの子ユダとイエスを裏切ったイスカリオテ・ユダである。 \v 17 それから、イエスは、彼らとともに山を下り、平らな所にお立ちになったが、多くの弟子たちの群れや、ユダヤ全土、エルサレム、さてはツロやシドンの海べから来た大ぜいの民衆がそこにいた。 \v 18 イエスの教えを聞き、また病気を直していただくために来た人々である。また、汚れた霊に悩まされていた人たちもいやされた。 \v 19 群衆のだれもが何とかしてイエスにさわろうとしていた。大きな力がイエスから出て、すべての人をいやしたからである。 \p \v 20 イエスは目を上げて弟子たちを見つめながら、話しだされた。「貧しい者は幸いです。神の国はあなたがたのものですから。 \v 21 いま飢えている者は幸いです。あなたがたは、やがて飽くことができますから。 \p いま泣いている者は幸いです。あなたがたは、いまに笑うようになりますから。 \v 22 人の子のために、人々があなたがたを憎むとき、また、あなたがたを除名し、はずかしめ、あなたがたの名をあしざまにけなすとき、あなたがたは幸いです。 \v 23 その日には、喜びなさい。おどり上がって喜びなさい。天ではあなたがたの報いは大きいからです。彼らの先祖も、預言者たちをそのように扱ったのです。 \v 24 しかし、富んでいるあなたがたは、哀れな者です。慰めを、すでに受けているからです。 \v 25 いま食べ飽きているあなたがたは、哀れな者です。やがて、飢えるようになるからです。いま笑っているあなたがたは、哀れな者です。やがて悲しみ泣くようになるからです。 \v 26 みなの人にほめられるときは、あなたがたは哀れな者です。彼らの先祖は、にせ預言者たちをそのように扱ったからです。 \p \v 27 しかし、いま聞いているあなたがたに、わたしはこう言います。あなたの敵を愛しなさい。あなたを憎む者に善を行ないなさい。 \v 28 あなたをのろう者を祝福しなさい。あなたを侮辱する者のために祈りなさい。 \v 29 あなたの片方の頬を打つ者には、ほかの頬をも向けなさい。上着を奪い取る者には、下着も拒んではいけません。 \v 30 すべて求める者には与えなさい。奪い取る者からは取り戻してはいけません。 \v 31 自分にしてもらいたいと望むとおり、人にもそのようにしなさい。 \v 32 自分を愛する者を愛したからといって、あなたがたに何の良いところがあるでしょう。罪人たちでさえ、自分を愛する者を愛しています。 \v 33 自分に良いことをしてくれる者に良いことをしたからといって、あなたがたに何の良いところがあるでしょう。罪人たちでさえ、同じことをしています。 \v 34 返してもらうつもりで人に貸してやったからといって、あなたがたに何の良いところがあるでしょう。貸した分を取り返すつもりなら、罪人たちでさえ、罪人たちに貸しています。 \v 35 ただ、自分の敵を愛しなさい。彼らによくしてやり、返してもらうことを考えずに貸しなさい。そうすれば、あなたがたの受ける報いはすばらしく、あなたがたは、いと高き方の子どもになれます。なぜなら、いと高き方は、恩知らずの悪人にも、あわれみ深いからです。 \v 36 あなたがたの天の父があわれみ深いように、あなたがたも、あわれみ深くしなさい。 \v 37 さばいてはいけません。そうすれば、自分もさばかれません。人を罪に定めてはいけません。そうすれば、自分も罪に定められません。赦しなさい。そうすれば、自分も赦されます。 \v 38 与えなさい。そうすれば、自分も与えられます。人々は量りをよくして、押しつけ、揺すり入れ、あふれるまでにして、ふところに入れてくれるでしょう。あなたがたは、人を量る量りで、自分も量り返してもらうからです。」 \p \v 39 イエスはまた一つのたとえを話された。「いったい、盲人に盲人の手引きができるでしょうか。ふたりとも穴に落ち込まないでしょうか。 \v 40 弟子は師以上には出られません。しかし十分訓練を受けた者はみな、自分の師ぐらいにはなるのです。 \v 41 あなたは、兄弟の目にあるちりが見えながら、どうして自分の目にある梁には気がつかないのですか。 \v 42 自分の目にある梁が見えずに、どうして兄弟に、『兄弟。あなたの目のちりを取らせてください。』と言えますか。偽善者たち。まず自分の目から梁を取りのけなさい。そうしてこそ、兄弟の目のちりがはっきり見えて、取りのけることができるのです。 \v 43 悪い実を結ぶ良い木はないし、良い実を結ぶ悪い木もありません。 \v 44 木はどれでも、その実によってわかるものです。いばらからいちじくは取れず、野ばらからぶどうを集めることはできません。 \v 45 良い人は、その心の良い倉から良い物を出し、悪い人は、悪い倉から悪い物を出します。なぜなら人の口は、心に満ちているものを話すからです。 \p \v 46 なぜ、わたしを『主よ、主よ。』と呼びながら、わたしの言うことを行なわないのですか。 \v 47 わたしのもとに来て、わたしのことばを聞き、それを行なう人たちがどんな人に似ているか、あなたがたに示しましょう。 \v 48 その人は、地面を深く掘り下げ、岩の上に土台を据えて、それから家を建てた人に似ています。洪水になり、川の水がその家に押し寄せたときも、しっかり建てられていたから、びくともしませんでした。 \v 49 聞いても実行しない人は、土台なしで地面に家を建てた人に似ています。川の水が押し寄せると、家は一ぺんに倒れてしまい、そのこわれ方はひどいものとなりました。」 \c 7 \p \v 1 イエスは、耳を傾けている民衆にこれらのことばをみな話し終えられると、カペナウムにはいられた。 \p \v 2 ところが、ある百人隊長に重んじられているひとりのしもべが、病気で死にかけていた。 \v 3 百人隊長は、イエスのことを聞き、みもとにユダヤ人の長老たちを送って、しもべを助けに来てくださるようお願いした。 \v 4 イエスのもとに来たその人たちは、熱心にお願いして言った。「この人は、あなたにそうしていただく資格のある人です。 \v 5 この人は、私たちの国民を愛し、私たちのために会堂を建ててくれた人です。」 \v 6 イエスは、彼らといっしょに行かれた。そして、百人隊長の家からあまり遠くない所に来られたとき、百人隊長は友人たちを使いに出して、イエスに伝えた。「主よ。わざわざおいでくださいませんように。あなたを私の屋根の下にお入れする資格は、私にはありません。 \v 7 ですから、私のほうから伺うことさえ失礼と存じました。ただ、おことばをいただかせてください。そうすれば、私のしもべは必ずいやされます。 \v 8 と申しますのは、私も権威の下にある者ですが、私の下にも兵士たちがいまして、そのひとりに『行け。』と言えば行きますし、別の者に『来い。』と言えば来ます。また、しもべに『これをせよ。』と言えば、そのとおりにいたします。」 \v 9 これを聞いて、イエスは驚かれ、ついて来ていた群衆のほうに向いて言われた。「あなたがたに言いますが、このようなりっぱな信仰は、イスラエルの中にも見たことがありません。」 \v 10 使いに来た人たちが家に帰ってみると、しもべはよくなっていた。 \p \v 11 それから間もなく、イエスはナインという町に行かれた。弟子たちと大ぜいの人の群れがいっしょに行った。 \v 12 イエスが町の門に近づかれると、やもめとなった母親のひとり息子が、死んでかつぎ出されたところであった。町の人たちが大ぜいその母親につき添っていた。 \v 13 主はその母親を見てかわいそうに思い、「泣かなくてもよい。」と言われた。 \v 14 そして近寄って棺に手をかけられると、かついでいた人たちが立ち止まったので、「青年よ。あなたに言う、起きなさい。」と言われた。 \v 15 すると、その死人が起き上がって、ものを言い始めたので、イエスは彼を母親に返された。 \v 16 人々は恐れを抱き、「大預言者が私たちのうちに現われた。」とか、「神がその民を顧みてくださった。」などと言って、神をあがめた。 \v 17 イエスについてこの話がユダヤ全土と回りの地方一帯に広まった。 \p \v 18 さて、ヨハネの弟子たちは、これらのことをすべてヨハネに報告した。 \v 19 すると、ヨハネは、弟子の中からふたりを呼び寄せて、主のもとに送り、「おいでになるはずの方は、あなたですか。それとも、私たちはほかの方を待つべきでしょうか。」と言わせた。 \v 20 ふたりはみもとに来て言った。「バプテスマのヨハネから遣わされてまいりました。『おいでになるはずの方は、あなたですか。それとも私たちはなおほかの方を待つべきでしょうか。』とヨハネが申しております。」 \v 21 ちょうどそのころ、イエスは、多くの人々を病気と苦しみと悪霊からいやし、また多くの盲人を見えるようにされた。 \v 22 そして、答えてこう言われた。「あなたがたは行って、自分たちの見たり聞いたりしたことをヨハネに報告しなさい。盲人が見えるようになり、足なえが歩き、らい病人がきよめられ、つんぼの人が聞こえ、死人が生き返り、貧しい者に福音が宣べ伝えられています。 \v 23 だれでも、わたしにつまずかない者は幸いです。」 \p \v 24 ヨハネの使いが帰ってから、イエスは群衆に、ヨハネについて話しだされた。「あなたがたは、何を見に荒野に出て行ったのですか。風に揺れる葦ですか。 \v 25 でなかったら、何を見に行ったのですか。柔らかい着物を着た人ですか。きらびやかな着物を着て、ぜいたくに暮らしている人たちなら宮殿にいます。 \v 26 でなかったら、何を見に行ったのですか。預言者ですか。そのとおり。だが、わたしが言いましょう。預言者よりもすぐれた者をです。 \v 27 その人こそ、 \mi 『見よ、わたしは使いをあなたの前に遣わし、 \mi あなたの道を、あなたの前に備えさせよう。』 \mi と書かれているその人です。 \v 28 あなたがたに言いますが、女から生まれた者の中で、ヨハネよりもすぐれた人は、ひとりもいません。しかし、神の国で一番小さい者でも、彼よりすぐれています。 \v 29 ヨハネの教えを聞いたすべての民は、取税人たちさえ、ヨハネのバプテスマを受けて、神の正しいことを認めたのです。 \v 30 これに反して、パリサイ人、律法の専門家たちは、彼からバプテスマを受けないで、神の自分たちに対するみこころを拒みました。 \v 31 では、この時代の人々は、何にたとえたらよいでしょう。何に似ているでしょう。 \v 32 市場にすわって、互いに呼びかけながら、こう言っている子どもたちに似ています。 \mi 『笛を吹いてやっても、君たちは踊らなかった。 \mi 弔いの歌を歌ってやっても、泣かなかった。』 \mi \v 33 というわけは、バプテスマのヨハネが来て、パンも食べず、ぶどう酒も飲まずにいると、『あれは悪霊につかれている。』とあなたがたは言うし、 \v 34 人の子が来て、食べもし、飲みもすると、『あれ見よ。食いしんぼうの大酒飲み、取税人や罪人の仲間だ。』と言うのです。 \v 35 だが、知恵の正しいことは、そのすべての子どもたちが証明します。」 \p \v 36 さて、あるパリサイ人が、いっしょに食事をしたい、とイエスを招いたので、そのパリサイ人の家にはいって食卓に着かれた。 \v 37 すると、その町にひとりの罪深い女がいて、イエスがパリサイ人の家で食卓に着いておられることを知り、香油のはいった石膏のつぼを持って来て、 \v 38 泣きながら、イエスのうしろで御足のそばに立ち、涙で御足をぬらし始め、髪の毛でぬぐい、御足に口づけして、香油を塗った。 \v 39 イエスを招いたパリサイ人は、これを見て、「この方がもし預言者なら、自分にさわっている女がだれで、どんな女であるか知っておられるはずだ。この女は罪深い者なのだから。」と心ひそかに思っていた。 \v 40 するとイエスは、彼に向かって、「シモン。あなたに言いたいことがあります。」と言われた。シモンは、「先生。お話しください。」と言った。 \mi \v 41 「ある金貸しから、ふたりの者が金を借りていた。ひとりは五百デナリ、ほかのひとりは五十デナリ借りていた。 \v 42 彼らは返すことができなかったので、金貸しはふたりとも赦してやった。 \mi では、ふたりのうちどちらがよけいに金貸しを愛するようになるでしょうか。」 \v 43 シモンが、「よけいに赦してもらったほうだと思います。」と答えると、イエスは、「あなたの判断は当たっています。」と言われた。 \v 44 そしてその女のほうを向いて、シモンに言われた。「この女を見ましたか。わたしがこの家にはいって来たとき、あなたは足を洗う水をくれなかったが、この女は、涙でわたしの足をぬらし、髪の毛でぬぐってくれました。 \v 45 あなたは、口づけしてくれなかったが、この女は、わたしがはいって来たときから足に口づけしてやめませんでした。 \v 46 あなたは、わたしの頭に油を塗ってくれなかったが、この女は、わたしの足に香油を塗ってくれました。 \v 47 だから、わたしは言うのです。『この女の多くの罪は赦されています。というのは、彼女はよけい愛したからです。しかし少ししか赦されない者は、少ししか愛しません。』」 \v 48 そして女に、「あなたの罪は赦されています。」と言われた。 \v 49 すると、いっしょに食卓にいた人たちは、心の中でこう言い始めた。「罪を赦したりするこの人は、いったいだれだろう。」 \v 50 しかし、イエスは女に言われた。「あなたの信仰が、あなたを救ったのです。安心して行きなさい。」 \c 8 \p \v 1 その後、イエスは、神の国を説き、その福音を宣べ伝えながら、町や村を次から次に旅をしておられた。十二弟子もお供をした。 \v 2 また、悪霊や病気を直していただいた女たち、すなわち、七つの悪霊を追い出していただいたマグダラの女と呼ばれるマリヤ、 \v 3 ヘロデの執事クーザの妻ヨハンナ、スザンナ、そのほか自分の財産をもって彼らに仕えている大ぜいの女たちもいっしょであった。 \p \v 4 さて、大ぜいの人の群れが集まり、また方々の町からも人々がみもとにやって来たので、イエスはたとえを用いて話された。 \mi \v 5 「種を蒔く人が種蒔きに出かけた。蒔いているとき、道ばたに落ちた種があった。すると、人に踏みつけられ、空の鳥がそれを食べてしまった。 \v 6 また、別の種は岩の上に落ち、生え出たが、水分がなかったので、枯れてしまった。 \v 7 また、別の種はいばらの真中に落ちた。ところが、いばらもいっしょに生え出て、それを押しふさいでしまった。 \v 8 また、別の種は良い地に落ち、生え出て、百倍の実を結んだ。」 \mi イエスは、これらのことを話しながら「聞く耳のある者は聞きなさい。」と叫ばれた。 \p \v 9 さて、弟子たちは、このたとえがどんな意味かをイエスに尋ねた。 \v 10 そこでイエスは言われた。「あなたがたに、神の国の奥義を知ることが許されているが、ほかの者には、たとえで話します。彼らが見ていても見えず、聞いていても悟らないためです。 \v 11 このたとえの意味はこうです。種は神のことばです。 \v 12 道ばたに落ちるとは、こういう人たちのことです。みことばを聞いたが、あとから悪魔が来て、彼らが信じて救われることのないように、その人たちの心から、みことばを持ち去ってしまうのです。 \v 13 岩の上に落ちるとは、こういう人たちのことです。聞いたときには喜んでみことばを受け入れるが、根がないので、しばらくは信じていても、試練のときになると、身を引いてしまうのです。 \v 14 いばらの中に落ちるとは、こういう人たちのことです。みことばを聞きはしたが、とかくしているうちに、この世の心づかいや、富や、快楽によってふさがれて、実が熟するまでにならないのです。 \v 15 しかし、良い地に落ちるとは、こういう人たちのことです。正しい、良い心でみことばを聞くと、それをしっかりと守り、よく耐えて、実を結ばせるのです。 \p \v 16 あかりをつけてから、それを器で隠したり、寝台の下に置いたりする者はありません。燭台の上に置きます。はいって来る人々に、その光が見えるためです。 \v 17 隠れているもので、あらわにならぬものはなく、秘密にされているもので、知られず、また現われないものはありません。 \v 18 だから、聞き方に注意しなさい。というのは、持っている人は、さらに与えられ、持たない人は、持っていると思っているものまでも取り上げられるからです。」 \p \v 19 イエスのところに母と兄弟たちが来たが、群衆のためにそばへ近寄れなかった。 \v 20 それでイエスに、「あなたのおかあさんと兄弟たちが、あなたに会おうとして、外に立っています。」という知らせがあった。 \v 21 ところが、イエスは人々にこう答えられた。「わたしの母、わたしの兄弟たちとは、神のことばを聞いて行なう人たちです。」 \p \v 22 そのころのある日のこと、イエスは弟子たちといっしょに舟に乗り、「さあ、湖の向こう岸へ渡ろう。」と言われた。それで弟子たちは舟を出した。 \v 23 舟で渡っている間にイエスはぐっすり眠ってしまわれた。ところが突風が湖に吹きおろして来たので、弟子たちは水をかぶって危険になった。 \v 24 そこで、彼らは近寄って行ってイエスを起こし、「先生、先生。私たちはおぼれて死にそうです。」と言った。イエスは、起き上がって、風と荒波とをしかりつけられた。すると風も波も治まり、なぎになった。 \v 25 イエスは彼らに、「あなたがたの信仰はどこにあるのです。」と言われた。弟子たちは驚き恐れて互いに言った。「風も水も、お命じになれば従うとは、いったいこの方はどういう方なのだろう。」 \p \v 26 こうして彼らは、ガリラヤの向こう側のゲラサ人の地方に着いた。 \v 27 イエスが陸に上がられると、この町の者で悪霊につかれている男がイエスに出会った。彼は、長い間着物も着けず、家には住まないで、墓場に住んでいた。 \v 28 彼はイエスを見ると、叫び声をあげ、御前にひれ伏して大声で言った。「いと高き神の子、イエスさま。いったい私に何をしようというのです。お願いです。どうか私を苦しめないでください。」 \v 29 それは、イエスが、汚れた霊に、この人から出て行け、と命じられたからである。汚れた霊が何回となくこの人を捕えたので、彼は鎖や足かせでつながれて看視されていたが、それでもそれらを断ち切っては悪霊によって荒野に追いやられていたのである。 \v 30 イエスが、「何という名か。」とお尋ねになると、「レギオンです。」と答えた。悪霊が大ぜい彼にはいっていたからである。 \v 31 悪霊どもはイエスに、底知れぬ所に行け、とはお命じになりませんようにと願った。 \v 32 ちょうど、山のそのあたりに、おびただしい豚の群れが飼ってあったので、悪霊どもは、その豚にはいることを許してくださいと願った。イエスはそれを許された。 \v 33 悪霊どもは、その人から出て、豚にはいった。すると、豚の群れはいきなりがけを駆け下って湖にはいり、おぼれ死んだ。 \v 34 飼っていた者たちは、この出来事を見て逃げ出し、町や村々でこの事を告げ知らせた。 \v 35 人々が、この出来事を見に来て、イエスのそばに来たところ、イエスの足もとに、悪霊の去った男が着物を着て、正気に返って、すわっていた。人々は恐ろしくなった。 \v 36 目撃者たちは、悪霊につかれていた人の救われた次第を、その人々に知らせた。 \v 37 ゲラサ地方の民衆はみな、すっかりおびえてしまい、イエスに自分たちのところから離れていただきたいと願った。そこで、イエスは舟に乗って帰られた。 \v 38 そのとき、悪霊を追い出された人が、お供をしたいとしきりに願ったが、イエスはこう言って彼を帰された。 \v 39 「家に帰って、神があなたにどんなに大きなことをしてくださったかを、話して聞かせなさい。」そこで彼は出て行って、イエスが自分にどんなに大きなことをしてくださったかを、町中に言い広めた。 \p \v 40 さて、イエスが帰られると、群衆は喜んで迎えた。みなイエスを待ちわびていたからである。 \v 41 するとそこに、ヤイロという人が来た。この人は会堂管理者であった。彼はイエスの足もとにひれ伏して自分の家に来ていただきたいと願った。 \v 42 彼には十二歳ぐらいのひとり娘がいて、死にかけていたのである。イエスがお出かけになると、群衆がみもとに押し迫って来た。 \p \v 43 ときに、十二年の間長血をわずらった女がいた。だれにも直してもらえなかったこの女は、 \v 44 イエスのうしろに近寄って、イエスの着物のふさにさわった。すると、たちどころに出血が止まった。 \v 45 イエスは、「わたしにさわったのは、だれですか。」と言われた。みな自分ではないと言ったので、ペテロは、「先生。この大ぜいの人が、ひしめき合って押しているのです。」と言った。 \v 46 しかし、イエスは、「だれかが、わたしにさわったのです。わたしから力が出て行くのを感じたのだから。」と言われた。 \v 47 女は、隠しきれないと知って、震えながら進み出て、御前にひれ伏し、すべての民の前で、イエスにさわったわけと、たちどころにいやされた次第とを話した。 \v 48 そこで、イエスは彼女に言われた。「娘よ。あなたの信仰があなたを直したのです。安心して行きなさい。」 \p \v 49 イエスがまだ話しておられるときに、会堂管理者の家から人が来て言った。「あなたのお嬢さんはなくなりました。もう、先生を煩わすことはありません。」 \v 50 これを聞いて、イエスは答えられた。「恐れないで、ただ信じなさい。そうすれば、娘は直ります。」 \v 51 イエスは家にはいられたが、ペテロとヨハネとヤコブ、それに子どもの父と母のほかは、だれもいっしょにはいることをお許しにならなかった。 \v 52 人々はみな、娘のために泣き悲しんでいた。しかし、イエスは言われた。「泣かなくてもよい。死んだのではない。眠っているのです。」 \v 53 人々は、娘が死んだことを知っていたので、イエスをあざ笑っていた。 \v 54 しかしイエスは、娘の手を取って、叫んで言われた。「子どもよ。起きなさい。」 \v 55 すると、娘の霊が戻って、娘はただちに起き上がった。それでイエスは、娘に食事をさせるように言いつけられた。 \v 56 両親がひどく驚いていると、イエスは、この出来事をだれにも話さないように命じられた。 \c 9 \p \v 1 イエスは、十二人を呼び集めて、彼らに、すべての悪霊を追い出し、病気を直すための、力と権威とをお授けになった。 \v 2 それから、神の国を宣べ伝え、病気を直すために、彼らを遣わされた。 \v 3 イエスは、こう言われた。「旅のために何も持って行かないようにしなさい。杖も、袋も、パンも、金も。また下着も、二枚は、いりません。 \v 4 どんな家にはいっても、そこにとどまり、そこから次の旅に出かけなさい。 \v 5 人々があなたがたを受け入れないばあいは、その町を出て行くときに、彼らに対する証言として、足のちりを払い落としなさい。」 \v 6 十二人は出かけて行って、村から村へと回りながら、至る所で福音を宣べ伝え、病気を直した。 \p \v 7 さて、国主ヘロデは、このすべての出来事を聞いて、ひどく当惑していた。それは、ある人々が、「ヨハネが死人の中からよみがえったのだ。」と言い、 \v 8 ほかの人々は、「エリヤが現われたのだ。」と言い、さらに別の人々は、「昔の預言者のひとりがよみがえったのだ。」と言っていたからである。 \v 9 ヘロデは言った。「ヨハネなら、私が首をはねたのだ。そうしたことがうわさされているこの人は、いったいだれなのだろう。」ヘロデはイエスに会ってみようとした。 \p \v 10 さて、使徒たちは帰って来て、自分たちのして来たことを報告した。それからイエスは彼らを連れてベツサイダという町へひそかに退かれた。 \v 11 ところが、多くの群衆がこれを知って、ついて来た。それで、イエスは喜んで彼らを迎え、神の国のことを話し、また、いやしの必要な人たちをおいやしになった。 \v 12 そのうち、日も暮れ始めたので、十二人はみもとに来て、「この群衆を解散させてください。そして回りの村や部落にやって、宿をとらせ、何か食べることができるようにさせてください。私たちは、こんな人里離れた所にいるのですから。」と言った。 \v 13 しかしイエスは、彼らに言われた。「あなたがたで、何か食べる物を上げなさい。」彼らは言った。「私たちには五つのパンと二匹の魚のほか何もありません。私たちが出かけて行って、この民全体のために食物を買うのでしょうか。」 \v 14 それは、男だけでおよそ五千人もいたからである。しかしイエスは、弟子たちに言われた。「人々を、五十人ぐらいずつ組にしてすわらせなさい。」 \v 15 弟子たちは、そのようにして、全部をすわらせた。 \v 16 するとイエスは、五つのパンと二匹の魚を取り、天を見上げて、それらを祝福して裂き、群衆に配るように弟子たちに与えられた。 \v 17 人々はみな、食べて満腹した。そして、余ったパン切れを取り集めると、十二かごあった。 \p \v 18 さて、イエスがひとりで祈っておられたとき、弟子たちがいっしょにいた。イエスは彼らに尋ねて言われた。「群衆はわたしのことをだれだと言っていますか。」 \v 19 彼らは、答えて言った。「バプテスマのヨハネだと言っています。ある者はエリヤだと言い、またほかの人々は、昔の預言者のひとりが生き返ったのだとも言っています。」 \v 20 イエスは、彼らに言われた。「では、あなたがたは、わたしをだれだと言いますか。」ペテロが答えて言った。「神のキリストです。」 \v 21 するとイエスは、このことをだれにも話さないようにと、彼らを戒めて命じられた。 \v 22 そして言われた。「人の子は、必ず多くの苦しみを受け、長老、祭司長、律法学者たちに捨てられ、殺され、そして三日目によみがえらねばならないのです。」 \v 23 イエスは、みなの者に言われた。「だれでもわたしについて来たいと思うなら、自分を捨て、日々自分の十字架を負い、そしてわたしについて来なさい。 \v 24 自分のいのちを救おうと思う者は、それを失い、わたしのために自分のいのちを失う者は、それを救うのです。 \v 25 人は、たとい全世界を手に入れても、自分自身を失い、損じたら、何の得がありましょう。 \v 26 もしだれでも、わたしとわたしのことばとを恥と思うなら、人の子も、自分と父と聖なる御使いとの栄光を帯びて来るときには、そのような人のことを恥とします。 \v 27 しかし、わたしは真実をあなたがたに告げます。ここに立っている人々の中には、神の国を見るまでは、決して死を味わわない者たちがいます。」 \p \v 28 これらの教えがあってから八日ほどして、イエスは、ペテロとヨハネとヤコブとを連れて、祈るために、山に登られた。 \v 29 祈っておられると、御顔の様子が変わり、御衣は白く光り輝いた。 \v 30 しかも、ふたりの人がイエスと話し合っているではないか。それはモーセとエリヤであって、 \v 31 栄光のうちに現われて、イエスがエルサレムで遂げようとしておられるご最期についていっしょに話していたのである。 \v 32 ペテロと仲間たちは、眠くてたまらなかったが、はっきり目がさめると、イエスの栄光と、イエスといっしょに立っているふたりの人を見た。 \v 33 それから、ふたりがイエスと別れようとしたとき、ペテロがイエスに言った。「先生。ここにいることは、すばらしいことです。私たちが三つの幕屋を造ります。あなたのために一つ、モーセのために一つ、エリヤのために一つ。」ペテロは何を言うべきかを知らなかったのである。 \v 34 彼がこう言っているうちに、雲がわき起こってその人々をおおった。彼らが雲に包まれると、弟子たちは恐ろしくなった。 \v 35 すると雲の中から、「これは、わたしの愛する子、わたしの選んだ者である。彼の言うことを聞きなさい。」と言う声がした。 \v 36 この声がしたとき、そこに見えたのはイエスだけであった。彼らは沈黙を守り、その当時は、自分たちの見たこのことをいっさい、だれにも話さなかった。 \p \v 37 次の日、一行が山から降りて来ると、大ぜいの人の群れがイエスを迎えた。 \v 38 すると、群衆の中から、ひとりの人が叫んで言った。「先生。お願いです。息子を見てやってください。ひとり息子です。 \v 39 ご覧ください。霊がこの子に取りつきますと、突然叫び出すのです。そしてひきつけさせてあわを吹かせ、かき裂いて、なかなか離れようとしません。 \v 40 お弟子たちに、この霊を追い出してくださるようお願いしたのですが、お弟子たちにはできませんでした。」 \v 41 イエスは答えて言われた。「ああ、不信仰な、曲がった今の世だ。いつまで、あなたがたといっしょにいて、あなたがたにがまんしていなければならないのでしょう。あなたの子をここに連れて来なさい。」 \v 42 その子が近づいて来る間にも、悪霊は彼を打ち倒して、激しくひきつけさせてしまった。それで、イエスは汚れた霊をしかって、その子をいやし、父親に渡された。 \v 43 人々はみな、神のご威光に驚嘆した。 \p イエスのなさったすべてのことに、人々がみな驚いていると、イエスは弟子たちにこう言われた。 \v 44 「このことばを、しっかりと耳に入れておきなさい。人の子は、いまに人々の手に渡されます。」 \v 45 しかし、弟子たちは、このみことばが理解できなかった。このみことばの意味は、わからないように、彼らから隠されていたのである。また彼らは、このみことばについてイエスに尋ねるのを恐れた。 \p \v 46 さて、弟子たちの間に、自分たちの中で、だれが一番偉いかという議論が持ち上がった。 \v 47 しかしイエスは、彼らの心の中の考えを知っておられて、ひとりの子どもの手を取り、自分のそばに立たせ、 \v 48 彼らに言われた。「だれでも、このような子どもを、わたしの名のゆえに受け入れる者は、わたしを受け入れる者です。また、わたしを受け入れる者は、わたしを遣わされた方を受け入れる者です。あなたがたすべての中で一番小さい者が一番偉いのです。」 \p \v 49 ヨハネが答えて言った。「先生。私たちは、先生の名を唱えて悪霊を追い出している者を見ましたが、やめさせました。私たちの仲間ではないので、やめさせたのです。」 \v 50 しかしイエスは、彼に言われた。「やめさせることはありません。あなたがたに反対しない者は、あなたがたの味方です。」 \p \v 51 さて、天に上げられる日が近づいて来たころ、イエスは、エルサレムに行こうとして御顔をまっすぐ向けられ、 \v 52 ご自分の前に使いを出された。彼らは行って、サマリヤ人の町にはいり、イエスのために準備した。 \v 53 しかし、イエスは御顔をエルサレムに向けて進んでおられたので、サマリヤ人はイエスを受け入れなかった。 \v 54 弟子のヤコブとヨハネが、これを見て言った。「主よ。私たちが天から火を呼び下して、彼らを焼き滅ぼしましょうか。」 \v 55 しかし、イエスは振り向いて、彼らを戒められた。 \v 56 そして一行は別の村に行った。 \p \v 57 さて、彼らが道を進んで行くと、ある人がイエスに言った。「私はあなたのおいでになる所なら、どこにでもついて行きます。」 \v 58 すると、イエスは彼に言われた。「狐には穴があり、空の鳥には巣があるが、人の子には枕する所もありません。」 \v 59 イエスは別の人に、こう言われた。「わたしについて来なさい。」しかしその人は言った。「まず行って、私の父を葬ることを許してください。」 \v 60 すると彼に言われた。「死人たちに彼らの中の死人たちを葬らせなさい。あなたは出て行って、神の国を言い広めなさい。」 \v 61 別の人はこう言った。「主よ。あなたに従います。ただその前に、家の者にいとまごいに帰らせてください。」 \v 62 するとイエスは彼に言われた。「だれでも、手を鋤につけてから、うしろを見る者は、神の国にふさわしくありません。」 \c 10 \p \v 1 その後、主は、別に七十人を定め、ご自分が行くつもりのすべての町や村へ、ふたりずつ先にお遣わしになった。 \v 2 そして、彼らに言われた。「実りは多いが、働き手が少ない。だから、収穫の主に、収穫のために働き手を送ってくださるように祈りなさい。 \v 3 さあ、行きなさい。いいですか。わたしがあなたがたを遣わすのは、狼の中に小羊を送り出すようなものです。 \v 4 財布も旅行袋も持たず、くつもはかずに行きなさい。だれにも、道であいさつしてはいけません。 \v 5 どんな家にはいっても、まず、『この家に平安があるように。』と言いなさい。 \v 6 もしそこに平安の子がいたら、あなたがたの祈った平安は、その人の上にとどまります。だが、もしいないなら、その平安はあなたがたに返って来ます。 \v 7 その家に泊まっていて、出してくれる物を飲み食いしなさい。働く者が報酬を受けるのは、当然だからです。家から家へと渡り歩いてはいけません。 \v 8 どの町にはいっても、あなたがたを受け入れてくれたら、出される物を食べなさい。 \v 9 そして、その町の病人を直し、彼らに、『神の国が、あなたがたに近づいた。』と言いなさい。 \v 10 しかし、町にはいっても、人々があなたがたを受け入れないならば、大通りに出て、こう言いなさい。 \v 11 『私たちは足についたこの町のちりも、あなたがたにぬぐい捨てて行きます。しかし、神の国が近づいたことは承知していなさい。』 \v 12 あなたがたに言うが、その日には、その町よりもソドムのほうがまだ罰が軽いのです。 \v 13 ああコラジン。ああベツサイダ。おまえたちの間に起こった力あるわざが、もしもツロとシドンでなされたのだったら、彼らはとうの昔に荒布をまとい、灰の中にすわって、悔い改めていただろう。 \v 14 しかし、さばきの日には、そのツロとシドンのほうが、まだおまえたちより罰が軽いのだ。 \v 15 カペナウム。どうしておまえが天に上げられることがありえよう。ハデスにまで落とされるのだ。 \v 16 あなたがたに耳を傾ける者は、わたしに耳を傾ける者であり、あなたがたを拒む者は、わたしを拒む者です。わたしを拒む者は、わたしを遣わされた方を拒む者です。」 \p \v 17 さて、七十人が喜んで帰って来て、こう言った。「主よ。あなたの御名を使うと、悪霊どもでさえ、私たちに服従します。」 \v 18 イエスは言われた。「わたしが見ていると、サタンが、いなずまのように天から落ちました。 \v 19 確かに、わたしは、あなたがたに、蛇やさそりを踏みつけ、敵のあらゆる力に打ち勝つ権威を授けたのです。だから、あなたがたに害を加えるものは何一つありません。 \v 20 だがしかし、悪霊どもがあなたがたに服従するからといって、喜んではなりません。ただあなたがたの名が天に書きしるされていることを喜びなさい。」 \p \v 21 ちょうどこのとき、イエスは、聖霊によって喜びにあふれて言われた。「天地の主であられる父よ。あなたをほめたたえます。これらのことを、賢い者や知恵のある者には隠して、幼子たちに現わしてくださいました。そうです、父よ。これがみこころにかなったことでした。 \v 22 すべてのものが、わたしの父から、わたしに渡されています。それで、子がだれであるかは、父のほかには知る者がありません。また父がだれであるかは、子と、子が父を知らせようと心に定めた人たちのほかは、だれも知る者がありません。」 \v 23 それからイエスは、弟子たちのほうに向いて、ひそかに言われた。「あなたがたの見ていることを見る目は幸いです。 \v 24 あなたがたに言いますが、多くの預言者や王たちがあなたがたの見ていることを見たいと願ったのに、見られなかったのです。また、あなたがたの聞いていることを聞きたいと願ったのに、聞けなかったのです。」 \p \v 25 すると、ある律法の専門家が立ち上がり、イエスをためそうとして言った。「先生。何をしたら永遠のいのちを自分のものとして受けることができるでしょうか。」 \v 26 イエスは言われた。「律法には、何と書いてありますか。あなたはどう読んでいますか。」 \v 27 すると彼は答えて言った。「『心を尽くし、思いを尽くし、力を尽くし、知性を尽くして、あなたの神である主を愛せよ。』また『あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ。』とあります。」 \v 28 イエスは言われた。「そのとおりです。それを実行しなさい。そうすれば、いのちを得ます。」 \v 29 しかし彼は、自分の正しさを示そうとしてイエスに言った。「では、私の隣人とは、だれのことですか。」 \v 30 イエスは答えて言われた。 \mi 「ある人が、エルサレムからエリコへ下る道で、強盗に襲われた。強盗どもは、その人の着物をはぎ取り、なぐりつけ、半殺しにして逃げて行った。 \v 31 たまたま、祭司がひとり、その道を下って来たが、彼を見ると、反対側を通り過ぎて行った。 \v 32 同じようにレビ人も、その場所に来て彼を見ると、反対側を通り過ぎて行った。 \v 33 ところが、あるサマリヤ人が、旅の途中、そこに来合わせ、彼を見てかわいそうに思い、 \v 34 近寄って傷にオリーブ油とぶどう酒を注いで、ほうたいをし、自分の家畜に乗せて宿屋に連れて行き、介抱してやった。 \v 35 次の日、彼はデナリ二つを取り出し、宿屋の主人に渡して言った。『介抱してあげてください。もっと費用がかかったら、私が帰りに払います。』 \mi \v 36 この三人の中でだれが、強盗に襲われた者の隣人になったと思いますか。」 \v 37 彼は言った。「その人にあわれみをかけてやった人です。」するとイエスは言われた。「あなたも行って同じようにしなさい。」 \p \v 38 さて、彼らが旅を続けているうち、イエスがある村にはいられると、マルタという女が喜んで家にお迎えした。 \v 39 彼女にマリヤという妹がいたが、主の足もとにすわって、みことばに聞き入っていた。 \v 40 ところが、マルタは、いろいろともてなしのために気が落ち着かず、みもとに来て言った。「主よ。妹が私だけにおもてなしをさせているのを、何ともお思いにならないのでしょうか。私の手伝いをするように、妹におっしゃってください。」 \v 41 主は答えて言われた。「マルタ、マルタ。あなたは、いろいろなことを心配して、気を使っています。 \v 42 しかし、どうしても必要なことはわずかです。いや、一つだけです。マリヤはその良いほうを選んだのです。彼女からそれを取り上げてはいけません。」 \c 11 \p \v 1 さて、イエスはある所で祈っておられた。その祈りが終わると、弟子のひとりが、イエスに言った。「主よ。ヨハネが弟子たちに教えたように、私たちにも祈りを教えてください。」 \v 2 そこでイエスは、彼らに言われた。「祈るときには、こう言いなさい。 \mi 『父よ。御名があがめられますように。 \mi 御国が来ますように。 \mi \v 3 私たちの日ごとの糧を毎日お与えください。 \mi \v 4 私たちの罪をお赦しください。私たちも私たちに負いめのある者をみな赦します。 \mi 私たちを試みに会わせないでください。』」 \b \p \v 5 また、イエスはこう言われた。「あなたがたのうち、だれかに友だちがいるとして、真夜中にその人のところに行き、『君。パンを三つ貸してくれ。 \v 6 友人が旅の途中、私のうちへ来たのだが、出してやるものがないのだ。』と言ったとします。 \v 7 すると、彼は家の中からこう答えます。『めんどうをかけないでくれ。もう戸締まりもしてしまったし、子どもたちも私も寝ている。起きて、何かをやることはできない。』 \v 8 あなたがたに言いますが、彼は友だちだからということで起きて何かを与えることはしないにしても、あくまで頼み続けるなら、そのためには起き上がって、必要な物を与えるでしょう。 \v 9 わたしは、あなたがたに言います。求めなさい。そうすれば与えられます。捜しなさい。そうすれば見つかります。たたきなさい。そうすれば開かれます。 \v 10 だれであっても、求める者は受け、捜す者は見つけ出し、たたく者には開かれます。 \v 11 あなたがたの中で、子どもが魚を下さいと言うときに、魚の代わりに蛇を与えるような父親が、いったいいるでしょうか。 \v 12 卵を下さいと言うのに、だれが、さそりを与えるでしょう。 \v 13 してみると、あなたがたも、悪い者ではあっても、自分の子どもには良い物を与えることを知っているのです。とすれば、なおのこと、天の父が、求める人たちに、どうして聖霊を下さらないことがありましょう。」 \p \v 14 イエスは悪霊、それもおしの悪霊を追い出しておられた。悪霊が出て行くと、おしがものを言い始めたので、群衆は驚いた。 \v 15 しかし、彼らのうちには、「悪霊どものかしらベルゼブルによって、悪霊どもを追い出しているのだ。」と言う者もいた。 \v 16 また、イエスをためそうとして、彼に天からのしるしを求める者もいた。 \v 17 しかし、イエスは、彼らの心を見抜いて言われた。「どんな国でも、内輪もめしたら荒れすたれ、家にしても、内輪で争えばつぶれます。 \v 18 サタンも、もし仲間割れしたのだったら、どうしてサタンの国が立ち行くことができましょう。それなのにあなたがたは、わたしがベルゼブルによって悪霊どもを追い出していると言います。 \v 19 もしもわたしが、ベルゼブルによって悪霊どもを追い出しているのなら、あなたがたの仲間は、だれによって追い出すのですか。だから、あなたがたの仲間が、あなたがたをさばく人となるのです。 \v 20 しかし、わたしが、神の指によって悪霊どもを追い出しているのなら、神の国はあなたがたに来ているのです。 \v 21 強い人が十分に武装して自分の家を守っているときには、その持ち物は安全です。 \v 22 しかし、もっと強い者が襲って来て彼に打ち勝つと、彼の頼みにしていた武具を奪い、分捕り品を分けます。 \v 23 わたしの味方でない者はわたしに逆らう者であり、わたしとともに集めない者は散らす者です。 \v 24 汚れた霊が人から出て行って、水のない所をさまよいながら、休み場を捜します。一つも見つからないので、『出て来た自分の家に帰ろう。』と言います。 \v 25 帰って見ると、家は、掃除をしてきちんとかたづいていました。 \v 26 そこで、出かけて行って、自分よりも悪いほかの霊を七つ連れて来て、みなはいり込んでそこに住みつくのです。そうなると、その人の後の状態は、初めよりもさらに悪くなります。」 \p \v 27 イエスが、これらのことを話しておられると、群衆の中から、ひとりの女が声を張り上げてイエスに言った。「あなたを産んだ腹、あなたが吸った乳房は幸いです。」 \v 28 しかし、イエスは言われた。「いや、幸いなのは、神のことばを聞いてそれを守る人たちです。」 \p \v 29 さて、群衆の数がふえて来ると、イエスは話し始められた。「この時代は悪い時代です。しるしを求めているが、ヨナのしるしのほかには、しるしは与えられません。 \v 30 というのは、ヨナがニネベの人々のために、しるしとなったように、人の子がこの時代のために、しるしとなるからです。 \v 31 南の女王が、さばきのときに、この時代の人々とともに立って、彼らを罪に定めます。なぜなら、彼女はソロモンの知恵を聞くために地の果てから来たからです。しかし、見なさい。ここにソロモンよりもまさった者がいるのです。 \v 32 ニネベの人々が、さばきのときに、この時代の人々とともに立って、この人々を罪に定めます。なぜなら、ニネベの人々はヨナの説教で悔い改めたからです。しかし、見なさい。ここにヨナよりもまさった者がいるのです。 \p \v 33 だれも、あかりをつけてから、それを穴倉や、枡の下に置く者はいません。燭台の上に置きます。はいって来る人々に、その光が見えるためです。 \v 34 からだのあかりは、あなたの目です。目が健全なら、あなたの全身も明るいが、しかし、目が悪いと、からだも暗くなります。 \v 35 だから、あなたのうちの光が、暗やみにならないように、気をつけなさい。 \v 36 もし、あなたの全身が明るくて何の暗い部分もないなら、その全身はちょうどあかりが輝いて、あなたを照らすときのように明るく輝きます。」 \p \v 37 イエスが話し終えられると、ひとりのパリサイ人が、食事をいっしょにしてください、とお願いした。そこでイエスは家にはいって、食卓に着かれた。 \v 38 そのパリサイ人は、イエスが食事の前に、まずきよめの洗いをなさらないのを見て、驚いた。 \v 39 すると、主は言われた。「なるほど、あなたがたパリサイ人は、杯や大皿の外側はきよめるが、その内側は、強奪と邪悪とでいっぱいです。 \v 40 愚かな人たち。外側を造られた方は、内側も造られたのではありませんか。 \v 41 とにかく、うちのものを施しに用いなさい。そうすれば、いっさいが、あなたがたにとってきよいものとなります。 \p \v 42 だが、忌まわしいものだ。パリサイ人。あなたがたは、はっか、うん香、あらゆる野菜などの十分の一を納めているが、公義と神への愛とはなおざりにしています。これこそ、実行しなければならない事がらです。ただし他のほうも、なおざりにしてはいけません。 \v 43 忌まわしいものだ。パリサイ人。あなたがたは、会堂の上席や、市場であいさつされることが好きです。 \v 44 忌まわしいことだ。あなたがたは、人目につかぬ墓のようで、その上を歩く人々も気がつかない。」 \p \v 45 すると、ある律法の専門家が、答えて言った。「先生。そのようなことを言われることは、私たちをも侮辱することです。」 \v 46 しかし、イエスは言われた。「あなたがた律法の専門家たちも忌まわしいものだ。あなたがたは、人々には負いきれない荷物を負わせるが、自分は、その荷物に指一本もさわろうとはしない。 \v 47 忌まわしいことだ。あなたがたは、預言者たちの墓を建てている。しかし、あなたがたの先祖は預言者たちを殺したのです。 \v 48 そのようにして、あなたがたは、自分の先祖のしたことの証人となり、それを認めています。なぜなら、あなたがたの先祖が預言者たちを殺し、あなたがたがその墓を建てているからです。 \v 49 だから、神の知恵もこう言いました。『わたしは預言者たちや使徒たちを彼らに遣わすが、彼らは、そのうちのある者を殺し、ある者を迫害する。 \v 50 それは、アベルの血から、祭壇と神の家との間で殺されたザカリヤの血に至るまでの、世の初めから流されたすべての預言者の血の責任を、この時代が問われるためである。そうだ。わたしは言う。この時代はその責任を問われる。』 \v 51-52 忌まわしいものだ。律法の専門家たち。あなたがたは、知識のかぎを持ち去り、自分もはいらず、はいろうとする人々をも妨げたのです。」 \p \v 53 イエスがそこを出て行かれると、律法学者、パリサイ人たちのイエスに対する激しい敵対と、いろいろのことについてのしつこい質問攻めとが始まった。 \v 54 彼らは、イエスの口から出ることに、言いがかりをつけようと、ひそかに計った。 \c 12 \p \v 1 そうこうしている間に、おびただしい数の群衆が集まって来て、互いに足を踏み合うほどになった。イエスはまず弟子たちに対して、話しだされた。「パリサイ人のパン種に気をつけなさい。それは彼らの偽善のことです。 \v 2 おおいかぶされているもので、現わされないものはなく、隠されているもので、知られずに済むものはありません。 \v 3 ですから、あなたがたが暗やみで言ったことが、明るみで聞かれ、家の中でささやいたことが、屋上で言い広められます。 \v 4 そこで、わたしの友であるあなたがたに言います。からだを殺しても、あとはそれ以上何もできない人間たちを恐れてはいけません。 \v 5 恐れなければならない方を、あなたがたに教えてあげましょう。殺したあとで、ゲヘナに投げ込む権威を持っておられる方を恐れなさい。そうです。あなたがたに言います。この方を恐れなさい。 \v 6 五羽の雀は二アサリオンで売っているでしょう。そんな雀の一羽でも、神の御前には忘れられてはいません。 \v 7 それどころか、あなたがたの頭の毛さえも、みな数えられています。恐れることはありません。あなたがたは、たくさんの雀よりもすぐれた者です。 \v 8 そこで、あなたがたに言います。だれでも、わたしを人の前で認める者は、人の子もまた、その人を神の御使いたちの前で認めます。 \v 9 しかし、わたしを人の前で知らないと言う者は、神の御使いたちの前で知らないと言われます。 \v 10 たとい、人の子をそしることばを使う者があっても、赦されます。しかし、聖霊をけがす者は赦されません。 \v 11 また、人々があなたがたを、会堂や役人や権力者などのところに連れて行ったとき、何をどう弁明しようか、何を言おうかと心配するには及びません。 \v 12 言うべきことは、そのときに聖霊が教えてくださるからです。」 \p \v 13 群衆の中のひとりが、「先生。私と遺産を分けるように私の兄弟に話してください。」と言った。 \v 14 すると彼に言われた。「いったいだれが、わたしをあなたがたの裁判官や調停者に任命したのですか。」 \v 15 そして人々に言われた。「どんな貪欲にも注意して、よく警戒しなさい。なぜなら、いくら豊かな人でも、その人のいのちは財産にあるのではないからです。」 \v 16 それから人々にたとえを話された。 \mi 「ある金持ちの畑が豊作であった。 \v 17 そこで彼は、心の中でこう言いながら考えた。『どうしよう。作物をたくわえておく場所がない。』 \v 18 そして言った。『こうしよう。あの倉を取りこわして、もっと大きいのを建て、穀物や財産はみなそこにしまっておこう。 \v 19 そして、自分のたましいにこう言おう。「たましいよ。これから先何年分もいっぱい物がためられた。さあ、安心して、食べて、飲んで、楽しめ。」』 \v 20 しかし神は彼に言われた。『愚か者。おまえのたましいは、今夜おまえから取り去られる。そうしたら、おまえが用意した物は、いったいだれのものになるのか。』 \v 21 自分のためにたくわえても、神の前に富まない者はこのとおりです。」 \b \p \v 22 それから弟子たちに言われた。「だから、わたしはあなたがたに言います。いのちのことで何を食べようかと心配したり、からだのことで何を着ようかと心配したりするのはやめなさい。 \v 23 いのちは食べ物よりたいせつであり、からだは着物よりたいせつだからです。 \v 24 烏のことを考えてみなさい。蒔きもせず、刈り入れもせず、納屋も倉もありません。けれども、神が彼らを養っていてくださいます。あなたがたは、鳥よりも、はるかにすぐれたものです。 \v 25 あなたがたのうちのだれが、心配したからといって、自分のいのちを少しでも延ばすことができますか。 \v 26 こんな小さなことさえできないで、なぜほかのことまで心配するのですか。 \v 27 ゆりの花のことを考えてみなさい。どうして育つのか。紡ぎもせず、織りもしないのです。しかし、わたしはあなたがたに言います。栄華を窮めたソロモンでさえ、このような花の一つほどにも着飾ってはいませんでした。 \v 28 しかし、きょうは野にあって、あすは炉に投げ込まれる草をさえ、神はこのように装ってくださるのです。ましてあなたがたには、どんなによくしてくださることでしょう。ああ、信仰の薄い人たち。 \v 29 何を食べたらよいか、何を飲んだらよいか、と捜し求めることをやめ、気をもむことをやめなさい。 \v 30 これらはみな、この世の異邦人たちが切に求めているものです。しかし、あなたがたの父は、それがあなたがたにも必要であることを知っておられます。 \v 31 何はともあれ、あなたがたは、神の国を求めなさい。そうすれば、これらの物は、それに加えて与えられます。 \v 32 小さな群れよ。恐れることはありません。あなたがたの父である神は、喜んであなたがたに御国をお与えになるからです。 \v 33 持ち物を売って、施しをしなさい。自分のために、古くならない財布を作り、朽ちることのない宝を天に積み上げなさい。そこには、盗人も近寄らず、しみもいためることがありません。 \v 34 あなたがたの宝のあるところに、あなたがたの心もあるからです。 \p \v 35 腰に帯を締め、あかりをともしていなさい。 \v 36 主人が婚礼から帰って来て戸をたたいたら、すぐに戸をあけようと、その帰りを待ち受けている人たちのようでありなさい。 \v 37 帰って来た主人に、目をさましているところを見られるしもべたちは幸いです。まことに、あなたがたに告げます。主人のほうが帯を締め、そのしもべたちを食卓に着かせ、そばにいて給仕をしてくれます。 \v 38 主人が真夜中に帰っても、夜明けに帰っても、いつでもそのようであることを見られるなら、そのしもべたちは幸いです。 \v 39 このことを知っておきなさい。もしも家の主人が、どろぼうの来る時間を知っていたなら、おめおめと自分の家に押し入られはしなかったでしょう。 \v 40 あなたがたも用心していなさい。人の子は、思いがけない時に来るのですから。」 \v 41 そこで、ペテロが言った。「主よ。このたとえは私たちのために話してくださるのですか。それともみなのためなのですか。」 \p \v 42 主は言われた。「では、主人から、その家のしもべたちを任されて、食事時には彼らに食べ物を与える忠実な思慮深い管理人とは、いったいだれでしょう。 \v 43 主人が帰って来たときに、そのようにしているのを見られるしもべは幸いです。 \v 44 わたしは真実をあなたがたに告げます。主人は彼に自分の全財産を任せるようになります。 \v 45 ところが、もし、そのしもべが、『主人の帰りはまだだ。』と心の中で思い、下男や下女を打ちたたき、食べたり飲んだり、酒に酔ったりし始めると、 \v 46 しもべの主人は、思いがけない日の思わぬ時間に帰って来ます。そして、彼をきびしく罰して、不忠実な者どもと同じめに会わせるに違いありません。 \v 47 主人の心を知りながら、その思いどおりに用意もせず、働きもしなかったしもべは、ひどくむち打たれます。 \v 48 しかし、知らずにいたために、むち打たれるようなことをしたしもべは、打たれても、少しで済みます。すべて、多く与えられた者は多く求められ、多く任された者は多く要求されます。 \p \v 49 わたしが来たのは、地に火を投げ込むためです。だから、その火が燃えていたらと、どんなに願っていることでしょう。 \v 50 しかし、わたしには受けるバプテスマがあります。それが成し遂げられるまでは、どんなに苦しむことでしょう。 \v 51 あなたがたは、地に平和を与えるためにわたしが来たと思っているのですか。そうではありません。あなたがたに言いますが、むしろ、分裂です。 \v 52 今から、一家五人は、三人がふたりに、ふたりが三人に対抗して分かれるようになります。 \v 53 父は息子に、息子は父に対抗し、母は娘に、娘は母に対抗し、しゅうとめは嫁に、嫁はしゅうとめに対抗して分かれるようになります。」 \p \v 54 群衆にもこう言われた。「あなたがたは、西に雲が起こるのを見るとすぐに、『にわか雨が来るぞ。』と言い、事実そのとおりになります。 \v 55 また南風が吹きだすと、『暑い日になるぞ。』と言い、事実そのとおりになります。 \v 56 偽善者たち。あなたがたは地や空の現象を見分けることを知りながら、どうして今のこの時代を見分けることができないのですか。 \v 57 また、なぜ自分から進んで、何が正しいかを判断しないのですか。 \v 58 あなたを告訴する者といっしょに役人の前に行くときは、途中でも、熱心に彼と和解するよう努めなさい。そうでないと、その人はあなたを裁判官のもとにひっぱって行きます。裁判官は執行人に引き渡し、執行人は牢に投げ込んでしまいます。 \v 59 あなたに言います。最後の一レプタを支払うまでは、そこから決して出られないのです。」 \c 13 \p \v 1 ちょうどそのとき、ある人たちがやって来て、イエスに報告した。ピラトがガリラヤ人たちの血をガリラヤ人たちのささげるいけにえに混ぜたというのである。 \v 2 イエスは彼らに答えて言われた。「そのガリラヤ人たちがそのような災難を受けたから、ほかのどのガリラヤ人よりも罪深い人たちだったとでも思うのですか。 \v 3 そうではない。わたしはあなたがたに言います。あなたがたも悔い改めないなら、みな同じように滅びます。 \v 4 また、シロアムの塔が倒れ落ちて死んだあの十八人は、エルサレムに住んでいるだれよりも罪深い人たちだったとでも思うのですか。 \v 5 そうではない。わたしはあなたがたに言います。あなたがたも悔い改めないなら、みな同じように滅びます。」 \p \v 6 イエスはこのようなたとえを話された。 \mi 「ある人が、ぶどう園にいちじくの木を植えておいた。実を取りに来たが、何も見つからなかった。 \v 7 そこで、ぶどう園の番人に言った。『見なさい。三年もの間、やって来ては、このいちじくの実のなるのを待っているのに、なっていたためしがない。これを切り倒してしまいなさい。何のために土地をふさいでいるのですか。』 \v 8 番人は答えて言った。『ご主人。どうか、ことし一年そのままにしてやってください。木の回りを掘って、肥やしをやってみますから。 \v 9 もしそれで来年、実を結べばよし、それでもだめなら、切り倒してください。』」 \b \p \v 10 イエスは安息日に、ある会堂で教えておられた。 \v 11 すると、そこに十八年も病の霊につかれ、腰が曲がって、全然伸ばすことのできない女がいた。 \v 12 イエスは、その女を見て、呼び寄せ、「あなたの病気はいやされました。」と言って、 \v 13 手を置かれると、女はたちどころに腰が伸びて、神をあがめた。 \v 14 すると、それを見た会堂管理者は、イエスが安息日にいやされたのを憤って、群衆に言った。「働いてよい日は六日です。その間に来て直してもらうがよい。安息日には、いけないのです。」 \v 15 しかし、主は彼に答えて言われた。「偽善者たち。あなたがたは、安息日に、牛やろばを小屋からほどき、水を飲ませに連れて行くではありませんか。 \v 16 この女はアブラハムの娘なのです。それを十八年もの間サタンが縛っていたのです。安息日だからといってこの束縛を解いてやってはいけないのですか。」 \v 17 こう話されると、反対していた者たちはみな、恥じ入り、群衆はみな、イエスのなさったすべての輝かしいみわざを喜んだ。 \p \v 18 そこで、イエスはこう言われた。「神の国は、何に似ているでしょう。何に比べたらよいでしょう。 \v 19 それは、からし種のようなものです。それを取って庭に蒔いたところ、生長して木になり、空の鳥が枝に巣を作りました。」 \p \v 20 またこう言われた。「神の国を何に比べましょう。 \v 21 パン種のようなものです。女がパン種を取って、三サトンの粉に混ぜたところ、全体がふくれました。」 \p \v 22 イエスは、町々村々を次々に教えながら通り、エルサレムへの旅を続けられた。 \v 23 すると、「主よ。救われる者は少ないのですか。」と言う人があった。イエスは、人々に言われた。 \v 24 「努力して狭い門からはいりなさい。なぜなら、あなたがたに言いますが、はいろうとしても、はいれなくなる人が多いのですから。 \v 25 家の主人が、立ち上がって、戸をしめてしまってからでは、外に立って、『ご主人さま。あけてください。』と言って、戸をいくらたたいても、もう主人は、『あなたがたがどこの者か、私は知らない。』と答えるでしょう。 \v 26 すると、あなたがたは、こう言い始めるでしょう。『私たちは、ごいっしょに、食べたり飲んだりいたしましたし、私たちの大通りで教えていただきました。』 \v 27 だが、主人はこう言うでしょう。『私はあなたがたがどこの者だか知りません。不正を行なう者たち。みな出て行きなさい。』 \v 28 神の国にアブラハムやイサクやヤコブや、すべての預言者たちがはいっているのに、あなたがたは外に投げ出されることになったとき、そこで泣き叫んだり、歯ぎしりしたりするのです。 \v 29 人々は、東からも西からも、また南からも北からも来て、神の国で食卓に着きます。 \v 30 いいですか、今しんがりの者があとで先頭になり、いま先頭の者がしんがりになるのです。」 \p \v 31 ちょうどそのとき、何人かのパリサイ人が近寄って来て、イエスに言った。「ここから出てほかの所へ行きなさい。ヘロデがあなたを殺そうと思っています。」 \v 32 イエスは言われた。「行って、あの狐にこう言いなさい。『よく見なさい。わたしは、きょうと、あすとは、悪霊どもを追い出し、病人を直し、三日目に全うされます。 \v 33 だが、わたしは、きょうもあすも次の日も進んで行かなければなりません。なぜなら、預言者がエルサレム以外の所で死ぬことはありえないからです。』 \v 34 ああ、エルサレム、エルサレム。預言者たちを殺し、自分に遣わされた人たちを石で打つ者、わたしは、めんどりがひなを翼の下にかばうように、あなたの子らを幾たび集めようとしたことか。それなのに、あなたがたはそれを好まなかった。 \v 35 見なさい。あなたがたの家は荒れ果てたままに残される。わたしはあなたがたに言います。『祝福あれ。主の御名によって来られる方に。』とあなたがたの言うときが来るまでは、あなたがたは決してわたしを見ることができません。」 \c 14 \p \v 1 ある安息日に、食事をしようとして、パリサイ派のある指導者の家にはいられたとき、みんながじっとイエスを見つめていた。 \v 2 そこには、イエスの真正面に、水腫をわずらっている人がいた。 \v 3 イエスは、律法の専門家、パリサイ人たちに、「安息日に病気を直すことは正しいことですか、それともよくないことですか。」と言われた。 \v 4 しかし、彼らは黙っていた。それで、イエスはその人を抱いて直してやり、そしてお帰しになった。 \v 5 それから、彼らに言われた。「自分の息子や牛が井戸に落ちたのに、安息日だからといって、すぐに引き上げてやらない者があなたがたのうちにいるでしょうか。」 \v 6 彼らは答えることができなかった。 \p \v 7 招かれた人々が上座を選んでいる様子に気づいておられたイエスは、彼らにたとえを話された。 \v 8 「婚礼の披露宴に招かれたときには、上座にすわってはいけません。あなたより身分の高い人が、招かれているかもしれないし、 \v 9 あなたやその人を招いた人が来て、『この人に席を譲ってください。』とあなたに言うなら、そのときあなたは恥をかいて、末席に着かなければならないでしょう。 \v 10 招かれるようなことがあって、行ったなら、末席に着きなさい。そうしたら、あなたを招いた人が来て、『どうぞもっと上席にお進みください。』と言うでしょう。そのときは、満座の中で面目を施すことになります。 \v 11 なぜなら、だれでも自分を高くする者は低くされ、自分を低くする者は高くされるからです。」 \p \v 12 また、イエスは、自分を招いてくれた人にも、こう話された。「昼食や夕食のふるまいをするなら、友人、兄弟、親族、近所の金持ちなどを呼んではいけません。でないと、今度は彼らがあなたを招いて、お返しすることになるからです。 \v 13 祝宴を催すばあいには、むしろ、貧しい人、不具の人、足なえ、盲人たちを招きなさい。 \v 14 その人たちはお返しができないので、あなたは幸いです。義人の復活のときお返しを受けるからです。」 \p \v 15 イエスといっしょに食卓に着いていた客のひとりはこれを聞いて、イエスに、「神の国で食事する人は、何と幸いなことでしょう。」と言った。 \v 16 するとイエスはこう言われた。 \mi 「ある人が盛大な宴会を催し、大ぜいの人を招いた。 \v 17 宴会の時刻になったのでしもべをやり、招いておいた人々に、『さあ、おいでください。もうすっかり、用意ができましたから。』と言わせた。 \v 18 ところが、みな同じように断わり始めた。最初の人はこう言った。『畑を買ったので、どうしても見に出かけなければなりません。すみませんが、お断わりさせていただきます。』 \v 19 もうひとりはこう言った。『五くびきの牛を買ったので、それをためしに行くところです。すみませんが、お断わりさせていただきます。』 \v 20 また、別の人はこう言った。『結婚したので、行くことができません。』 \v 21 しもべは帰って、このことを主人に報告した。すると、おこった主人は、そのしもべに言った。『急いで町の大通りや路地に出て行って、貧しい人や、不具の人や、盲人や、足なえをここに連れて来なさい。』 \v 22 しもべは言った。『ご主人さま。仰せのとおりにいたしました。でも、まだ席があります。』 \v 23 主人は言った。『街道や垣根のところに出かけて行って、この家がいっぱいになるように、無理にでも人々を連れて来なさい。 \v 24 言っておくが、あの招待されていた人たちの中で、私の食事を味わう者は、ひとりもいないのです。』」 \b \p \v 25 さて、大ぜいの群衆が、イエスといっしょに歩いていたが、イエスは彼らのほうに向いて言われた。 \v 26 「わたしのもとに来て、自分の父、母、妻、子、兄弟、姉妹、そのうえ自分のいのちまでも憎まない者は、わたしの弟子になることができません。 \v 27 自分の十字架を負ってわたしについて来ない者は、わたしの弟子になることはできません。 \v 28 塔を築こうとするとき、まずすわって、完成に十分な金があるかどうか、その費用を計算しない者が、あなたがたのうちにひとりでもあるでしょうか。 \v 29 基礎を築いただけで完成できなかったら、見ていた人はみな彼をあざ笑って、 \v 30 『この人は、建て始めはしたものの、完成できなかった。』と言うでしょう。 \v 31 また、どんな王でも、ほかの王と戦いを交えようとするときは、二万人を引き連れて向かって来る敵を、一万人で迎え撃つことができるかどうかを、まずすわって、考えずにいられましょうか。 \v 32 もし見込みがなければ、敵がまだ遠くに離れている間に、使者を送って講和を求めるでしょう。 \v 33 そういうわけで、あなたがたはだれでも、自分の財産全部を捨てないでは、わたしの弟子になることはできません。 \v 34 ですから、塩は良いものですが、もしその塩が塩けをなくしたら、何によってそれに味をつけるのでしょうか。 \v 35 土地にも肥やしにも役立たず、外に投げ捨てられてしまいます。聞く耳のある人は聞きなさい。」 \c 15 \p \v 1 さて、取税人、罪人たちがみな、イエスの話を聞こうとして、みもとに近寄って来た。 \v 2 すると、パリサイ人、律法学者たちは、つぶやいてこう言った。「この人は、罪人たちを受け入れて、食事までいっしょにする。」 \p \v 3 そこでイエスは、彼らにこのようなたとえを話された。 \mi \v 4 「あなたがたのうちに羊を百匹持っている人がいて、そのうちの一匹をなくしたら、その人は九十九匹を野原に残して、いなくなった一匹を見つけるまで捜し歩かないでしょうか。 \v 5 見つけたら、大喜びでその羊をかついで、 \v 6 帰って来て、友だちや近所の人たちを呼び集め、『いなくなった羊を見つけましたから、いっしょに喜んでください。』と言うでしょう。 \mi \v 7 あなたがたに言いますが、それと同じように、ひとりの罪人が悔い改めるなら、悔い改める必要のない九十九人の正しい人にまさる喜びが天にあるのです。 \mi \v 8 また、女の人が銀貨を十枚持っていて、もしその一枚をなくしたら、あかりをつけ、家を掃いて、見つけるまで念入りに捜さないでしょうか。 \v 9 見つけたら、友だちや近所の女たちを呼び集めて、『なくした銀貨を見つけましたから、いっしょに喜んでください。』と言うでしょう。 \v 10 あなたがたに言いますが、それと同じように、ひとりの罪人が悔い改めるなら、神の御使いたちに喜びがわき起こるのです。」 \mi \v 11 またこう話された。 \mi 「ある人に息子がふたりあった。 \v 12 弟が父に、『おとうさん。私に財産の分け前を下さい。』と言った。それで父は、身代をふたりに分けてやった。 \v 13 それから、幾日もたたぬうちに、弟は、何もかもまとめて遠い国に旅立った。そして、そこで放蕩して湯水のように財産を使ってしまった。 \v 14 何もかも使い果たしたあとで、その国に大ききんが起こり、彼は食べるにも困り始めた。 \v 15 それで、その国のある人のもとに身を寄せたところ、その人は彼を畑にやって、豚の世話をさせた。 \v 16 彼は豚の食べるいなご豆で腹を満たしたいほどであったが、だれひとり彼に与えようとはしなかった。 \v 17 しかし、我に返ったとき彼は、こう言った。『父のところには、パンのあり余っている雇い人が大ぜいいるではないか。それなのに、私はここで、飢え死にしそうだ。 \v 18 立って、父のところに行って、こう言おう。「おとうさん。私は天に対して罪を犯し、またあなたの前に罪を犯しました。 \v 19 もう私は、あなたの子と呼ばれる資格はありません。雇い人のひとりにしてください。」』 \v 20 こうして彼は立ち上がって、自分の父のもとに行った。ところが、まだ家までは遠かったのに、父親は彼を見つけ、かわいそうに思い、走り寄って彼を抱き、口づけした。 \v 21 息子は言った。『おとうさん。私は天に対して罪を犯し、またあなたの前に罪を犯しました。もう私は、あなたの子と呼ばれる資格はありません。』 \v 22 ところが父親は、しもべたちに言った。『急いで一番良い着物を持って来て、この子に着せなさい。それから、手に指輪をはめさせ、足にくつをはかせなさい。 \v 23 そして肥えた子牛を引いて来てほふりなさい。食べて祝おうではないか。 \v 24 この息子は、死んでいたのが生き返り、いなくなっていたのが見つかったのだから。』そして彼らは祝宴を始めた。 \v 25 ところで、兄息子は畑にいたが、帰って来て家に近づくと、音楽や踊りの音が聞こえて来た。それで、 \v 26 しもべのひとりを呼んで、これはいったい何事かと尋ねると、 \v 27 しもべは言った。『弟さんがお帰りになったのです。無事な姿をお迎えしたというので、おとうさんが、肥えた子牛をほふらせなさったのです。』 \v 28 すると、兄はおこって、家にはいろうともしなかった。それで、父が出て来て、いろいろなだめてみた。 \v 29 しかし兄は父にこう言った。『ご覧なさい。長年の間、私はおとうさんに仕え、戒めを破ったことは一度もありません。その私には、友だちと楽しめと言って、子山羊一匹下さったことがありません。 \v 30 それなのに、遊女におぼれてあなたの身代を食いつぶして帰って来たこのあなたの息子のためには、肥えた子牛をほふらせなさったのですか。』 \v 31 父は彼に言った。『おまえはいつも私といっしょにいる。私のものは、全部おまえのものだ。 \v 32 だがおまえの弟は、死んでいたのが生き返って来たのだ。いなくなっていたのが見つかったのだから、楽しんで喜ぶのは当然ではないか。』」 \b \c 16 \p \v 1 イエスは、弟子たちにも、こういう話をされた。 \mi 「ある金持ちにひとりの管理人がいた。この管理人が主人の財産を乱費している、という訴えが出された。 \v 2 主人は、彼を呼んで言った。『おまえについてこんなことを聞いたが、何ということをしてくれたのだ。もう管理を任せておくことはできないから、会計の報告を出しなさい。』 \v 3 管理人は心の中で言った。『主人にこの管理の仕事を取り上げられるが、さてどうしよう。土を掘るには力がないし、こじきをするのは恥ずかしいし。 \v 4 ああ、わかった。こうしよう。こうしておけば、いつ管理の仕事をやめさせられても、人がその家に私を迎えてくれるだろう。』 \v 5 そこで彼は、主人の債務者たちをひとりひとり呼んで、まず最初の者に、『私の主人に、いくら借りがありますか。』と言うと、 \v 6 その人は、『油百バテ。』と言った。すると彼は、『さあ、あなたの証文だ。すぐにすわって五十と書きなさい。』と言った。 \v 7 それから、別の人に、『さて、あなたは、いくら借りがありますか。』と言うと、『小麦百コル。』と言った。彼は、『さあ、あなたの証文だ。八十と書きなさい。』と言った。 \v 8 この世の子らは、自分たちの世のことについては、光の子らよりも抜けめがないものなので、主人は、不正な管理人がこうも抜けめなくやったのをほめた。 \mi \v 9 そこで、わたしはあなたがたに言いますが、不正の富で、自分のために友をつくりなさい。そうしておけば、富がなくなったとき、彼らはあなたがたを、永遠の住まいに迎えるのです。 \v 10 小さい事に忠実な人は、大きい事にも忠実であり、小さい事に不忠実な人は、大きい事にも不忠実です。 \v 11 ですから、あなたがたが不正の富に忠実でなかったら、だれがあなたがたに、まことの富を任せるでしょう。 \v 12 また、あなたがたが他人のものに忠実でなかったら、だれがあなたがたに、あなたがたのものを持たせるでしょう。 \v 13 しもべは、ふたりの主人に仕えることはできません。一方を憎んで他方を愛したり、または一方を重んじて他方を軽んじたりするからです。あなたがたは、神にも仕え、また富にも仕えるということはできません。」 \p \v 14 さて、金の好きなパリサイ人たちが、一部始終を聞いて、イエスをあざ笑っていた。 \v 15 イエスは彼らに言われた。「あなたがたは、人の前で自分を正しいとする者です。しかし神は、あなたがたの心をご存じです。人間の間であがめられる者は、神の前で憎まれ、きらわれます。 \v 16 律法と預言者はヨハネまでです。それ以来、神の国の福音は宣べ伝えられ、だれもかれも、無理にでも、これにはいろうとしています。 \v 17 しかし律法の一画が落ちるよりも、天地の滅びるほうがやさしいのです。 \v 18 だれでも妻を離別してほかの女と結婚する者は、姦淫を犯す者であり、また、夫から離別された女と結婚する者も、姦淫を犯す者です。 \p \v 19 ある金持ちがいた。いつも紫の衣や細布を着て、毎日ぜいたくに遊び暮らしていた。 \mi \v 20 ところが、その門前にラザロという全身おできの貧乏人が寝ていて、 \v 21 金持ちの食卓から落ちる物で腹を満たしたいと思っていた。犬もやって来ては、彼のおできをなめていた。 \v 22 さて、この貧乏人は死んで、御使いたちによってアブラハムのふところに連れて行かれた。金持ちも死んで葬られた。 \v 23 その金持ちは、ハデスで苦しみながら目を上げると、アブラハムが、はるかかなたに見えた。しかも、そのふところにラザロが見えた。 \v 24 彼は叫んで言った。『父アブラハムさま。私をあわれんでください。ラザロが指先を水に浸して私の舌を冷やすように、ラザロをよこしてください。私はこの炎の中で、苦しくてたまりません。』 \v 25 アブラハムは言った。『子よ。思い出してみなさい。おまえは生きている間、良い物を受け、ラザロは生きている間、悪い物を受けていました。しかし、今ここで彼は慰められ、おまえは苦しみもだえているのです。 \v 26 そればかりでなく、私たちとおまえたちの間には、大きな淵があります。ここからそちらへ渡ろうとしても、渡れないし、そこからこちらへ越えて来ることもできないのです。』 \v 27 彼は言った。『父よ。ではお願いです。ラザロを私の父の家に送ってください。 \v 28 私には兄弟が五人ありますが、彼らまでこんな苦しみの場所に来ることのないように、よく言い聞かせてください。』 \v 29 しかしアブラハムは言った。『彼らには、モーセと預言者があります。その言うことを聞くべきです。』 \v 30 彼は言った。『いいえ、父アブラハム。もし、だれかが死んだ者の中から彼らのところに行ってやったら、彼らは悔い改めるに違いありません。』 \v 31 アブラハムは彼に言った。『もしモーセと預言者との教えに耳を傾けないのなら、たといだれかが死人の中から生き返っても、彼らは聞き入れはしない。』」 \b \c 17 \p \v 1 イエスは弟子たちにこう言われた。「つまずきが起こるのは避けられない。だが、つまずきを起こさせる者は、忌まわしいものです。 \v 2 この小さい者たちのひとりに、つまずきを与えるようであったら、そんな者は石臼を首にゆわえつけられて、海に投げ込まれたほうがましです。 \v 3 気をつけていなさい。もし兄弟が罪を犯したなら、彼を戒めなさい。そして悔い改めれば、赦しなさい。 \v 4 かりに、あなたに対して一日に七度罪を犯しても、『悔い改めます。』と言って七度あなたのところに来るなら、赦してやりなさい。」 \p \v 5 使徒たちは主に言った。「私たちの信仰を増してください。」 \v 6 しかし主は言われた。「もしあなたがたに、からし種ほどの信仰があったなら、この桑の木に、『根こそぎ海の中に植われ。』と言えば、言いつけどおりになるのです。 \v 7 ところで、あなたがたのだれかに、耕作か羊飼いをするしもべがいるとして、そのしもべが野らから帰って来たとき、『さあ、さあ、ここに来て、食事をしなさい。』としもべに言うでしょうか。 \v 8 かえって、『私の食事の用意をし、帯を締めて私の食事が済むまで給仕しなさい。あとで、自分の食事をしなさい。』と言わないでしょうか。 \v 9 しもべが言いつけられたことをしたからといって、そのしもべに感謝するでしょうか。 \v 10 あなたがたもそのとおりです。自分に言いつけられたことをみな、してしまったら、『私たちは役に立たないしもべです。なすべきことをしただけです。』と言いなさい。」 \p \v 11 そのころイエスはエルサレムに上られる途中、サマリヤとガリラヤの境を通られた。 \v 12 ある村にはいると、十人のらい病人がイエスに出会った。彼らは遠く離れた所に立って、 \v 13 声を張り上げて、「イエスさま、先生。どうぞあわれんでください。」と言った。 \v 14 イエスはこれを見て、言われた。「行きなさい。そして自分を祭司に見せなさい。」彼らは行く途中でいやされた。 \v 15 そのうちのひとりは、自分のいやされたことがわかると、大声で神をほめたたえながら引き返して来て、 \v 16 イエスの足もとにひれ伏して感謝した。彼はサマリヤ人であった。 \v 17 そこでイエスは言われた。「十人いやされたのではないか。九人はどこにいるのか。 \v 18 神をあがめるために戻って来た者は、この外国人のほかには、だれもいないのか。」 \v 19 それからその人に言われた。「立ち上がって、行きなさい。あなたの信仰が、あなたを直したのです。」 \p \v 20 さて、神の国はいつ来るのか、とパリサイ人たちに尋ねられたとき、イエスは答えて言われた。「神の国は、人の目で認められるようにして来るものではありません。 \v 21 『そら、ここにある。』とか、『あそこにある。』とか言えるようなものではありません。いいですか。神の国は、あなたがたのただ中にあるのです。」 \p \v 22 イエスは弟子たちに言われた。「人の子の日を一日でも見たいと願っても、見られない時が来ます。 \v 23 人々が『こちらだ。』とか、『あちらだ。』とか言っても行ってはなりません。あとを追いかけてはなりません。 \v 24 いなずまが、ひらめいて、天の端から天の端へと輝くように、人の子は、人の子の日には、ちょうどそのようであるからです。 \v 25 しかし、人の子はまず、多くの苦しみを受け、この時代に捨てられなければなりません。 \v 26 人の子の日に起こることは、ちょうど、ノアの日に起こったことと同様です。 \v 27 ノアが箱舟にはいるその日まで、人々は、食べたり、飲んだり、めとったり、とついだりしていたが、洪水が来て、すべての人を滅ぼしてしまいました。 \v 28 また、ロトの時代にあったことと同様です。人々は食べたり、飲んだり、売ったり、買ったり、植えたり、建てたりしていたが、 \v 29 ロトがソドムから出て行くと、その日に、火と硫黄が天から降って、すべての人を滅ぼしてしまいました。 \v 30 人の子の現われる日にも、全くそのとおりです。 \v 31 その日には、屋上にいる者は家に家財があっても、取り出しに降りてはいけません。同じように、畑にいる者も家に帰ってはいけません。 \v 32 ロトの妻を思い出しなさい。 \v 33 自分のいのちを救おうと努める者はそれを失い、それを失う者はいのちを保ちます。 \v 34 あなたがたに言いますが、その夜、同じ寝台で男がふたり寝ていると、ひとりは取られ、他のひとりは残されます。 \v 35 女がふたりいっしょに臼をひいていると、ひとりは取られ、他のひとりは残されます。」 \v 36-37 弟子たちは答えて言った。「主よ。どこでですか。」主は言われた。「死体のある所、そこに、はげたかも集まります。」 \c 18 \p \v 1 いつでも祈るべきであり、失望してはならないことを教えるために、イエスは彼らにたとえを話された。 \mi \v 2 「ある町に、神を恐れず、人を人とも思わない裁判官がいた。 \v 3 その町に、ひとりのやもめがいたが、彼のところにやって来ては、『私の相手をさばいて、私を守ってください。』と言っていた。 \v 4 彼は、しばらくは取り合わないでいたが、後には心ひそかに『私は神を恐れず人を人とも思わないが、 \v 5 どうも、このやもめは、うるさくてしかたがないから、この女のために裁判をしてやることにしよう。でないと、ひっきりなしにやって来てうるさくてしかたがない。』と言った。」 \v 6 主は言われた。「不正な裁判官の言っていることを聞きなさい。 \v 7 まして神は、夜昼神を呼び求めている選民のためにさばきをつけないで、いつまでもそのことを放っておかれることがあるでしょうか。 \v 8 あなたがたに言いますが、神は、すみやかに彼らのために正しいさばきをしてくださいます。しかし、人の子が来たとき、はたして地上に信仰が見られるでしょうか。」 \b \p \v 9 自分を義人だと自任し、他の人々を見下している者たちに対しては、イエスはこのようなたとえを話された。 \mi \v 10 「ふたりの人が、祈るために宮に上った。ひとりはパリサイ人で、もうひとりは取税人であった。 \v 11 パリサイ人は、立って、心の中でこんな祈りをした。『神よ。私はほかの人々のようにゆする者、不正な者、姦淫する者ではなく、ことにこの取税人のようではないことを、感謝します。 \v 12 私は週に二度断食し、自分の受けるものはみな、その十分の一をささげております。』 \v 13 ところが、取税人は遠く離れて立ち、目を天に向けようともせず、自分の胸をたたいて言った。『神さま。こんな罪人の私をあわれんでください。』 \mi \v 14 あなたがたに言うが、この人のほうが、前の人よりも、義と認められ、家に帰って行きました。なぜなら、だれでも自分を高くする者は低くされ、自分を低くする者は高くされるからです。」 \p \v 15 イエスにさわっていただこうとして、人々がその幼子たちを、みもとに連れて来た。ところが、弟子たちがそれを見てしかった。 \v 16 しかしイエスは、幼子たちを呼び寄せて、こう言われた。「子どもたちをわたしのところに来させなさい。止めてはいけません。神の国は、このような者たちのものです。 \v 17 まことに、あなたがたに告げます。子どものように神の国を受け入れる者でなければ、決してそこに、はいることはできません。」 \p \v 18 またある役人が、イエスに質問して言った。「尊い先生。私は何をしたら、永遠のいのちを自分のものとして受けることができるでしょうか。」 \v 19 イエスは彼に言われた。「なぜ、わたしを『尊い』と言うのですか。尊い方は、神おひとりのほかにはだれもありません。 \v 20 戒めはあなたもよく知っているはずです。『姦淫してはならない。殺してはならない。盗んではならない。偽証を立ててはならない。父と母を敬え。』」 \v 21 すると彼は言った。「そのようなことはみな、小さい時から守っております。」 \v 22 イエスはこれを聞いて、その人に言われた。「あなたには、まだ一つだけ欠けたものがあります。あなたの持ち物を全部売り払い、貧しい人々に分けてやりなさい。そうすれば、あなたは天に宝を積むことになります。そのうえで、わたしについて来なさい。」 \v 23 すると彼は、これを聞いて、非常に悲しんだ。たいへんな金持ちだったからである。 \v 24 イエスは彼を見てこう言われた。「裕福な者が神の国にはいることは、何とむずかしいことでしょう。 \v 25 金持ちが神の国にはいるよりは、らくだが針の穴を通るほうがもっとやさしい。」 \v 26 これを聞いた人々が言った。「それでは、だれが救われることができるでしょう。」 \v 27 イエスは言われた。「人にはできないことが、神にはできるのです。」 \v 28 すると、ペテロが言った。「ご覧ください。私たちは自分の家を捨てて従ってまいりました。」 \v 29 イエスは彼らに言われた。「まことに、あなたがたに告げます。神の国のために、家、妻、兄弟、両親、子どもを捨てた者で、だれひとりとして、 \v 30 この世にあってその幾倍かを受けない者はなく、後の世で永遠のいのちを受けない者はありません。」 \v 31 さてイエスは、十二弟子をそばに呼んで、彼らに話された。「さあ、これから、わたしたちはエルサレムに向かって行きます。人の子について預言者たちが書いているすべてのことが実現されるのです。 \v 32 人の子は異邦人に引き渡され、そして彼らにあざけられ、はずかしめられ、つばきをかけられます。 \v 33 彼らは人の子をむちで打ってから殺します。しかし、人の子は三日目によみがえります。」 \v 34 しかし弟子たちには、これらのことが何一つわからなかった。彼らには、このことばは隠されていて、話された事が理解できなかった。 \p \v 35 イエスがエリコに近づかれたころ、ある盲人が、道ばたにすわり、物ごいをしていた。 \v 36 群衆が通って行くのを耳にして、これはいったい何事ですか、と尋ねた。 \v 37 ナザレのイエスがお通りになるのだ、と知らせると、 \v 38 彼は大声で、「ダビデの子のイエスさま。私をあわれんでください。」と言った。 \v 39 彼を黙らせようとして、先頭にいた人々がたしなめたが、盲人は、ますます「ダビデの子よ。私をあわれんでください。」と叫び立てた。 \v 40 イエスは立ち止まって、彼をそばに連れて来るように言いつけられた。 \v 41 彼が近寄って来たので、「わたしに何をしてほしいのか。」と尋ねられると、彼は、「主よ。目が見えるようになることです。」と言った。 \v 42 イエスが彼に、「見えるようになれ。あなたの信仰があなたを直したのです。」と言われると、 \v 43 彼はたちどころに目が見えるようになり、神をあがめながらイエスについて行った。これを見て民はみな神を賛美した。 \c 19 \p \v 1 それからイエスは、エリコにはいって、町をお通りになった。 \v 2 ここには、ザアカイという人がいたが、彼は取税人のかしらで、金持ちであった。 \v 3 彼は、イエスがどんな方か見ようとしたが、背が低かったので、群衆のために見ることができなかった。 \v 4 それで、イエスを見るために、前方に走り出て、いちじく桑の木に登った。ちょうどイエスがそこを通り過ぎようとしておられたからである。 \v 5 イエスは、ちょうどそこに来られて、上を見上げて彼に言われた。「ザアカイ。急いで降りて来なさい。きょうは、あなたの家に泊まることにしてあるから。」 \v 6 ザアカイは、急いで降りて来て、そして大喜びでイエスを迎えた。 \v 7 これを見て、みなは、「あの方は罪人のところに行って客となられた。」と言ってつぶやいた。 \v 8 ところがザアカイは立って、主に言った。「主よ。ご覧ください。私の財産の半分を貧しい人たちに施します。また、だれからでも、私がだまし取った物は、四倍にして返します。」 \v 9 イエスは、彼に言われた。「きょう、救いがこの家に来ました。この人もアブラハムの子なのですから。 \v 10 人の子は、失われた人を捜して救うために来たのです。」 \p \v 11 人々がこれらのことに耳を傾けているとき、イエスは、続けて一つのたとえを話された。それは、イエスがエルサレムに近づいておられ、そのため人々は神の国がすぐにでも現われるように思っていたからである。 \v 12 それで、イエスはこう言われた。 \mi 「ある身分の高い人が、遠い国に行った。王位を受けて帰るためであった。 \v 13 彼は自分の十人のしもべを呼んで、十ミナを与え、彼らに言った。『私が帰るまで、これで商売しなさい。』 \v 14 しかし、その国民たちは、彼を憎んでいたので、あとから使いをやり、『この人に、私たちの王にはなってもらいたくありません。』と言った。 \v 15 さて、彼が王位を受けて帰って来たとき、金を与えておいたしもべたちがどんな商売をしたかを知ろうと思い、彼らを呼び出すように言いつけた。 \v 16 さて、最初の者が現われて言った。『ご主人さま。あなたの一ミナで、十ミナをもうけました。』 \v 17 主人は彼に言った。『よくやった。良いしもべだ。あなたはほんの小さな事にも忠実だったから、十の町を支配する者になりなさい。』 \v 18 二番目の者が来て言った。『ご主人さま。あなたの一ミナで、五ミナをもうけました。』 \v 19 主人はこの者にも言った。『あなたも五つの町を治めなさい。』 \v 20 もうひとりが来て言った。『ご主人さま。さあ、ここにあなたの一ミナがございます。私はふろしきに包んでしまっておきました。 \v 21 あなたは計算の細かい、きびしい方ですから、恐ろしゅうございました。あなたはお預けにならなかったものをも取り立て、お蒔きにならなかったものをも刈り取る方ですから。』 \v 22 主人はそのしもべに言った。『悪いしもべだ。私はあなたのことばによって、あなたをさばこう。あなたは、私が預けなかったものを取り立て、蒔かなかったものを刈り取るきびしい人間だと知っていた、というのか。 \v 23 だったら、なぜ私の金を銀行に預けておかなかったのか。そうすれば私は帰って来たときに、それを利息といっしょに受け取れたはずだ。』 \v 24 そして、そばに立っていた者たちに言った。『その一ミナを彼から取り上げて、十ミナ持っている人にやりなさい。』 \v 25 すると彼らは、『ご主人さま。その人は十ミナも持っています。』と言った。 \v 26 彼は言った。『あなたがたに言うが、だれでも持っている者は、さらに与えられ、持たない者からは、持っている物までも取り上げられるのです。 \v 27 ただ、私が王になるのを望まなかったこの敵どもは、みなここに連れて来て、私の目の前で殺してしまえ。』」 \b \p \v 28 これらのことを話して後、イエスは、さらに進んで、エルサレムへと上って行かれた。 \p \v 29 オリーブという山のふもとのベテパゲとベタニヤに近づかれたとき、イエスはふたりの弟子を使いに出して、 \v 30 言われた。「向こうの村に行きなさい。そこにはいると、まだだれも乗ったことのない、ろばの子がつないであるのに気がつくでしょう。それをほどいて連れて来なさい。 \v 31 もし、『なぜ、ほどくのか。』と尋ねる人があったら、こう言いなさい。『主がお入用なのです。』」 \v 32 使いに出されたふたりが行って見ると、イエスが話されたとおりであった。 \v 33 彼らがろばの子をほどいていると、その持ち主が、「なぜ、このろばの子をほどくのか。」と彼らに言った。 \v 34 弟子たちは、「主がお入用なのです。」と言った。 \v 35 そしてふたりは、それをイエスのもとに連れて来た。そして、そのろばの子の上に自分たちの上着を敷いて、イエスをお乗せした。 \v 36 イエスが進んで行かれると、人々は道に自分たちの上着を敷いた。 \v 37 イエスがすでにオリーブ山のふもとに近づかれたとき、弟子たちの群れはみな、自分たちの見たすべての力あるわざのことで、喜んで大声に神を賛美し始め、 \v 38 こう言った。 \mi 「祝福あれ。 \mi 主の御名によって来られる王に。 \mi 天には平和。 \mi 栄光は、いと高き所に。」 \mi \v 39 するとパリサイ人のうちのある者たちが、群衆の中から、イエスに向かって、「先生。お弟子たちをしかってください。」と言った。 \v 40 イエスは答えて言われた。「わたしは、あなたがたに言います。もしこの人たちが黙れば、石が叫びます。」 \p \v 41 エルサレムに近くなったころ、都を見られたイエスは、その都のために泣いて、 \v 42 言われた。「おまえも、もし、この日のうちに、平和のことを知っていたのなら。しかし今は、そのことがおまえの目から隠されている。 \v 43 やがておまえの敵が、おまえに対して塁を築き、回りを取り巻き、四方から攻め寄せ、 \v 44 そしておまえとその中の子どもたちを地にたたきつけ、おまえの中で、一つの石もほかの石の上に積まれたままでは残されない日が、やって来る。それはおまえが、神の訪れの時を知らなかったからだ。」 \p \v 45 宮にはいられたイエスは、商売人たちを追い出し始め、 \v 46 こう言われた。「『わたしの家は、祈りの家でなければならない。』と書いてある。それなのに、あなたがたはそれを強盗の巣にした。」 \p \v 47 イエスは毎日、宮で教えておられた。祭司長、律法学者、民のおもだった者たちは、イエスを殺そうとねらっていたが、 \v 48 どうしてよいかわからなかった。民衆がみな、熱心にイエスの話に耳を傾けていたからである。 \c 20 \p \v 1 イエスは宮で民衆を教え、福音を宣べ伝えておられたが、ある日、祭司長、律法学者たちが、長老たちといっしょにイエスに立ち向かって、 \v 2 イエスに言った。「何の権威によって、これらのことをしておられるのですか。あなたにその権威を授けたのはだれですか。それを言ってください。」 \v 3 そこで答えて言われた。「わたしも一言尋ねますから、それに答えなさい。 \v 4 ヨハネのバプテスマは、天から来たのですか、人から出たのですか。」 \v 5 すると彼らは、こう言って、互いに論じ合った。「もし、天から、と言えば、それならなぜ、彼を信じなかったか、と言うだろう。 \v 6 しかし、もし、人から、と言えば、民衆がみなで私たちを石で打ち殺すだろう。ヨハネを預言者と信じているのだから。」 \v 7 そこで、「どこからか知りません。」と答えた。 \v 8 するとイエスは、「わたしも、何の権威によってこれらのことをするのか、あなたがたに話すまい。」と言われた。 \p \v 9 また、イエスは、民衆にこのようなたとえを話された。 \mi 「ある人がぶどう園を造り、それを農夫たちに貸して、長い旅に出た。 \v 10 そして季節になったので、ぶどう園の収穫の分けまえをもらうために、農夫たちのところへひとりのしもべを遣わした。ところが、農夫たちは、そのしもべを袋だたきにし、何も持たせないで送り帰した。 \v 11 そこで、別のしもべを遣わしたが、彼らは、そのしもべも袋だたきにし、はずかしめたうえで、何も持たせないで送り帰した。 \v 12 彼はさらに三人目のしもべをやったが、彼らは、このしもべにも傷を負わせて追い出した。 \v 13 ぶどう園の主人は言った。『どうしたものか。よし、愛する息子を送ろう。彼らも、この子はたぶん敬ってくれるだろう。』 \v 14 ところが、農夫たちはその息子を見て、議論しながら言った。『あれはあと取りだ。あれを殺そうではないか。そうすれば、財産はこちらのものだ。』 \v 15 そして、彼をぶどう園の外に追い出して、殺してしまった。 \mi こうなると、ぶどう園の主人は、どうするでしょう。 \v 16 彼は戻って来て、この農夫どもを打ち滅ぼし、ぶどう園をほかの人たちに与えてしまいます。」これを聞いた民衆は、「そんなことがあってはなりません。」と言った。 \v 17 イエスは、彼らを見つめて言われた。「では、 \mi 『家を建てる者たちの見捨てた石、 \mi それが礎の石となった。』 \mi と書いてあるのは、何のことでしょう。 \v 18 この石の上に落ちれば、だれでも粉々に砕け、またこの石が人の上に落ちれば、その人を粉みじんに飛び散らしてしまうのです。」 \p \v 19 律法学者、祭司長たちは、イエスが自分たちをさしてこのたとえを話されたと気づいたので、この際イエスに手をかけて捕えようとしたが、やはり民衆を恐れた。 \v 20 さて、機会をねらっていた彼らは、義人を装った間者を送り、イエスのことばを取り上げて、総督の支配と権威にイエスを引き渡そう、と計った。 \v 21 その間者たちは、イエスに質問して言った。「先生。私たちは、あなたがお話しになり、お教えになることは正しく、またあなたは分け隔てなどせず、真理に基づいて神の道を教えておられることを知っています。 \v 22 ところで、私たちが、カイザルに税金を納めることは、律法にかなっていることでしょうか。かなっていないことでしょうか。」 \v 23 イエスはそのたくらみを見抜いて彼らに言われた。 \v 24 「デナリ銀貨をわたしに見せなさい。これはだれの肖像ですか。だれの銘ですか。」彼らは、「カイザルのです。」と言った。 \v 25 すると彼らに言われた。「では、カイザルのものはカイザルに返しなさい。そして神のものは神に返しなさい。」 \v 26 彼らは、民衆の前でイエスのことばじりをつかむことができず、お答えに驚嘆して黙ってしまった。 \p \v 27 ところが、復活があることを否定するサドカイ人のある者たちが、イエスのところに来て、質問して、 \v 28 こう言った。「先生。モーセは私たちのためにこう書いています。『もし、ある人の兄が妻をめとって死に、しかも子がなかったばあいは、その弟はその女を妻にして、兄のための子をもうけなければならない。』 \v 29 ところで、七人の兄弟がいました。長男は妻をめとりましたが、子どもがなくて死にました。 \v 30 次男も、 \v 31 三男もその女をめとり、七人とも同じようにして、子どもを残さずに死にました。 \v 32 あとで、その女も死にました。 \v 33 すると復活の際、その女はだれの妻になるでしょうか。七人ともその女を妻としたのですが。」 \v 34 イエスは彼らに言われた。「この世の子らは、めとったり、とついだりするが、 \v 35 次の世にはいるのにふさわしく、死人の中から復活するのにふさわしい、と認められる人たちは、めとることも、とつぐこともありません。 \v 36 彼らはもう死ぬことができないからです。彼らは御使いのようであり、また、復活の子として神の子どもだからです。 \v 37 それに、死人がよみがえることについては、モーセも柴の個所で、主を、『アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神。』と呼んで、このことを示しました。 \v 38 神は死んだ者の神ではありません。生きている者の神です。というのは、神に対しては、みなが生きているからです。」 \v 39 律法学者のうちのある者たちが答えて、「先生。りっぱなお答えです。」と言った。 \v 40 彼らはもうそれ以上何も質問する勇気がなかった。 \p \v 41 すると、イエスが彼らに言われた。「どうして人々は、キリストをダビデの子と言うのですか。 \v 42 ダビデ自身が詩篇の中でこう言っています。 \mi 『主は私の主に言われた。 \mi \v 43 「わたしが、あなたの敵を \mi あなたの足台とする時まで、 \mi わたしの右の座に着いていなさい。」』 \mi \v 44 こういうわけで、ダビデがキリストを主と呼んでいるのに、どうしてキリストがダビデの子でしょう。」 \p \v 45 また、民衆がみな耳を傾けているときに、イエスは弟子たちにこう言われた。 \v 46 「律法学者たちには気をつけなさい。彼らは、長い衣をまとって歩き回ったり、広場であいさつされたりすることが好きで、また会堂の上席や宴会の上座が好きです。 \v 47 また、やもめの家を食いつぶし、見えを飾るために長い祈りをします。こういう人たちは人一倍きびしい罰を受けるのです。」 \c 21 \p \v 1 さてイエスが、目を上げてご覧になると、金持ちたちが献金箱に献金を投げ入れていた。 \v 2 また、ある貧しいやもめが、そこにレプタ銅貨二つを投げ入れているのをご覧になった。 \v 3 それでイエスは言われた。「わたしは真実をあなたがたに告げます。この貧しいやもめは、どの人よりもたくさん投げ入れました。 \v 4 みなは、あり余る中から献金を投げ入れたのに、この女は、乏しい中から、持っていた生活費の全部を投げ入れたからです。」 \p \v 5 宮がすばらしい石や奉納物で飾ってあると話していた人々があった。するとイエスはこう言われた。 \v 6 「あなたがたの見ているこれらの物について言えば、石がくずされずに積まれたまま残ることのない日がやって来ます。」 \v 7 彼らは、イエスに質問して言った。「先生。それでは、これらのことは、いつ起こるのでしょう。これらのことが起こるときは、どんな前兆があるのでしょう。」 \v 8 イエスは言われた。「惑わされないように気をつけなさい。わたしの名を名のる者が大ぜい現われ、『私がそれだ。』とか『時は近づいた。』とか言います。そんな人々のあとについて行ってはなりません。 \v 9 戦争や暴動のことを聞いても、こわがってはいけません。それは、初めに必ず起こることです。だが、終わりは、すぐには来ません。」 \p \v 10 それから、イエスは彼らに言われた。「民族は民族に、国は国に敵対して立ち上がり、 \v 11 大地震があり、方々に疫病やききんが起こり、恐ろしいことや天からのすさまじい前兆が現われます。 \v 12 しかし、これらのすべてのことの前に、人々はあなたがたを捕えて迫害し、会堂や牢に引き渡し、わたしの名のために、あなたがたを王たちや総督たちの前に引き出すでしょう。 \v 13 それはあなたがたのあかしをする機会となります。 \v 14 それで、どう弁明するかは、あらかじめ考えないことに、心を定めておきなさい。 \v 15 どんな反対者も、反論もできず、反証もできないようなことばと知恵を、わたしがあなたがたに与えます。 \v 16 しかしあなたがたは、両親、兄弟、親族、友人たちにまで裏切られます。中には殺される者もあり、 \v 17 わたしの名のために、みなの者に憎まれます。 \v 18 しかし、あなたがたの髪の毛一筋も失われることはありません。 \v 19 あなたがたは、忍耐によって、自分のいのちを勝ち取ることができます。 \p \v 20 しかし、エルサレムが軍隊に囲まれるのを見たら、そのときには、その滅亡が近づいたことを悟りなさい。 \v 21 そのとき、ユダヤにいる人々は山へ逃げなさい。都の中にいる人々は、そこから立ちのきなさい。いなかにいる者たちは、都にはいってはいけません。 \v 22 これは、書かれているすべてのことが成就する報復の日だからです。 \v 23 その日、悲惨なのは身重の女と乳飲み子を持つ女です。この地に大きな苦難が臨み、この民に御怒りが臨むからです。 \v 24 人々は、剣の刃に倒れ、捕虜となってあらゆる国に連れて行かれ、異邦人の時の終わるまで、エルサレムは異邦人に踏み荒らされます。 \p \v 25 そして、日と月と星には、前兆が現われ、地上では、諸国の民が、海と波が荒れどよめくために不安に陥って悩み、 \v 26 人々は、その住むすべての所を襲おうとしていることを予想して、恐ろしさのあまり気を失います。天の万象が揺り動かされるからです。 \v 27 そのとき、人々は、人の子が力と輝かしい栄光を帯びて雲に乗って来るのを見るのです。 \v 28 これらのことが起こり始めたなら、からだをまっすぐにし、頭を上に上げなさい。贖いが近づいたのです。」 \p \v 29 それからイエスは、人々にたとえを話された。「いちじくの木や、すべての木を見なさい。 \v 30 木の芽が出ると、それを見て夏の近いことがわかります。 \v 31 そのように、これらのことが起こるのを見たら、神の国は近いと知りなさい。 \v 32 まことに、あなたがたに告げます。すべてのことが起こってしまうまでは、この時代は過ぎ去りません。 \v 33 この天地は滅びます。しかし、わたしのことばは決して滅びることがありません。 \p \v 34 あなたがたの心が、放蕩や深酒やこの世の煩いのために沈み込んでいるところに、その日がわなのように、突然あなたがたに臨むことのないように、よく気をつけていなさい。 \v 35 その日は、全地の表に住むすべての人に臨むからです。 \v 36 しかし、あなたがたは、やがて起ころうとしているこれらすべてのことからのがれ、人の子の前に立つことができるように、いつも油断せずに祈っていなさい。」 \p \v 37 さてイエスは、昼は宮で教え、夜はいつも外に出てオリーブという山で過ごされた。 \v 38 民衆はみな朝早く起きて、教えを聞こうとして、宮におられるイエスのもとに集まって来た。 \c 22 \p \v 1 さて、過越の祭りといわれる、種なしパンの祝いが近づいていた。 \v 2 祭司長、律法学者たちは、イエスを殺すための良い方法を捜していた。というのは、彼らは民衆を恐れていたからである。 \p \v 3 さて、十二弟子のひとりで、イスカリオテと呼ばれるユダに、サタンがはいった。 \v 4 ユダは出かけて行って、祭司長たちや宮の守衛長たちと、どのようにしてイエスを彼らに引き渡そうかと相談した。 \v 5 彼らは喜んで、ユダに金をやる約束をした。 \v 6 ユダは承知した。そして群衆のいないときにイエスを彼らに引き渡そうと機会をねらっていた。 \p \v 7 さて、過越の小羊のほふられる、種なしパンの日が来た。 \v 8 イエスは、こう言ってペテロとヨハネを遣わされた。「わたしたちの過越の食事ができるように、準備をしに行きなさい。」 \v 9 彼らはイエスに言った。「どこに準備しましょうか。」 \v 10 イエスは言われた。「町にはいると、水がめを運んでいる男に会うから、その人がはいる家にまでついて行きなさい。 \v 11 そして、その家の主人に、『弟子たちといっしょに過越の食事をする客間はどこか、と先生があなたに言っておられる。』と言いなさい。 \v 12 すると主人は、席が整っている二階の大広間を見せてくれます。そこで準備をしなさい。」 \v 13 彼らが出かけて見ると、イエスの言われたとおりであった。それで、彼らは過越の食事の用意をした。 \p \v 14 さて時間になって、イエスは食卓に着かれ、使徒たちもイエスといっしょに席に着いた。 \v 15 イエスは言われた。「わたしは、苦しみを受ける前に、あなたがたといっしょに、この過越の食事をすることをどんなに望んでいたことか。 \v 16 あなたがたに言いますが、過越が神の国において成就するまでは、わたしはもはや二度と過越の食事をすることはありません。」 \v 17 そしてイエスは、杯を取り、感謝をささげて後、言われた。「これを取って、互いに分けて飲みなさい。 \v 18 あなたがたに言いますが、今から、神の国が来る時までは、わたしはもはや、ぶどうの実で造った物を飲むことはありません。」 \v 19 それから、パンを取り、感謝をささげてから、裂いて、弟子たちに与えて言われた。「これは、あなたがたのために与える、わたしのからだです。わたしを覚えてこれを行ないなさい。」 \v 20 食事の後、杯も同じようにして言われた。「この杯は、あなたがたのために流されるわたしの血による新しい契約です。 \v 21 しかし、見なさい。わたしを裏切る者の手が、わたしとともに食卓にあります。 \v 22 人の子は、定められたとおりに去って行きます。しかし、人の子を裏切るような人間はのろわれます。」 \v 23 そこで弟子たちは、そんなことをしようとしている者は、いったいこの中のだれなのかと、互いに議論をし始めた。 \p \v 24 また、彼らの間には、この中でだれが一番偉いだろうかという論議も起こった。 \v 25 すると、イエスは彼らに言われた。「異邦人の王たちは人々を支配し、また人々の上に権威を持つ者は守護者と呼ばれています。 \v 26 だが、あなたがたは、それではいけません。あなたがたの間で一番偉い人は一番年の若い者のようになりなさい。また、治める人は仕える人のようでありなさい。 \v 27 食卓に着く人と給仕する者と、どちらが偉いでしょう。むろん、食卓に着く人でしょう。しかしわたしは、あなたがたのうちにあって給仕する者のようにしています。 \v 28 けれども、あなたがたこそ、わたしのさまざまの試練の時にも、わたしについて来てくれた人たちです。 \v 29 わたしの父がわたしに王権を与えてくださったように、わたしもあなたがたに王権を与えます。 \v 30 それであなたがたは、わたしの国でわたしの食卓に着いて食事をし、王座に着いて、イスラエルの十二の部族をさばくのです。 \p \v 31 シモン、シモン。見なさい。サタンが、あなたがたを麦のようにふるいにかけることを願って聞き届けられました。 \v 32 しかし、わたしは、あなたの信仰がなくならないように、あなたのために祈りました。だからあなたは、立ち直ったら、兄弟たちを力づけてやりなさい。」 \v 33 シモンはイエスに言った。「主よ。ごいっしょになら、牢であろうと、死であろうと、覚悟はできております。」 \v 34 しかし、イエスは言われた。「ペテロ。あなたに言いますが、きょう鶏が鳴くまでに、あなたは三度、わたしを知らないと言います。」 \p \v 35 それから、弟子たちに言われた。「わたしがあなたがたを、財布も旅行袋もくつも持たせずに旅に出したとき、何か足りない物がありましたか。」彼らは言った。「いいえ。何もありませんでした。」 \v 36 そこで言われた。「しかし、今は、財布のある者は財布を持ち、同じく袋を持ち、剣のない者は着物を売って剣を買いなさい。 \v 37 あなたがたに言いますが、『彼は罪人たちの中に数えられた。』と書いてあるこのことが、わたしに必ず実現するのです。わたしにかかわることは実現します。」 \v 38 彼らは言った。「主よ。このとおり、ここに剣が二振りあります。」イエスは彼らに、「それで十分。」と言われた。 \p \v 39 それからイエスは出て、いつものようにオリーブ山に行かれ、弟子たちも従った。 \v 40 いつもの場所に着いたとき、イエスは彼らに、「誘惑に陥らないように祈っていなさい。」と言われた。 \v 41 そしてご自分は、弟子たちから石を投げて届くほどの所に離れて、ひざまずいて、こう祈られた。 \v 42 「父よ。みこころならば、この杯をわたしから取りのけてください。しかし、わたしの願いではなく、みこころのとおりにしてください。」 \v 43 すると、御使いが天からイエスに現われて、イエスを力づけた。 \v 44 イエスは、苦しみもだえて、いよいよ切に祈られた。汗が血のしずくのように地に落ちた。 \v 45 イエスは祈り終わって立ち上がり、弟子たちのところに来て見ると、彼らは悲しみの果てに、眠り込んでしまっていた。 \v 46 それで、彼らに言われた。「なぜ、眠っているのか。起きて、誘惑に陥らないように祈っていなさい。」 \p \v 47 イエスがまだ話をしておられるとき、群衆がやって来た。十二弟子のひとりで、ユダという者が、先頭に立っていた。ユダはイエスに口づけしようとして、みもとに近づいた。 \v 48 だが、イエスは彼に、「ユダ。口づけで、人の子を裏切ろうとするのか。」と言われた。 \v 49 イエスの回りにいた者たちは、事の成り行きを見て、「主よ。剣で撃ちましょうか。」と言った。 \v 50 そしてそのうちのある者が、大祭司のしもべに撃ってかかり、その右の耳を切り落とした。 \v 51 するとイエスは、「やめなさい。それまで。」と言われた。そして、耳にさわって彼を直してやられた。 \v 52 そして押しかけて来た祭司長、宮の守衛長、長老たちに言われた。「まるで強盗にでも向かうように、剣や棒を持ってやって来たのですか。 \v 53 あなたがたは、わたしが毎日宮でいっしょにいる間は、わたしに手出しもしなかった。しかし、今はあなたがたの時です。暗やみの力です。」 \p \v 54 彼らはイエスを捕え、引いて行って、大祭司の家に連れて来た。ペテロは、遠く離れてついて行った。 \v 55 彼らは中庭の真中に火をたいて、みなすわり込んだので、ペテロも中に混じって腰をおろした。 \v 56 すると、女中が、火あかりの中にペテロのすわっているのを見つけ、まじまじと見て言った。「この人も、イエスといっしょにいました。」 \v 57 ところが、ペテロはそれを打ち消して、「いいえ、私はあの人を知りません。」と言った。 \v 58 しばらくして、ほかの男が彼を見て、「あなたも、彼らの仲間だ。」と言った。しかし、ペテロは、「いや、違います。」と言った。 \v 59 それから一時間ほどたつと、また別の男が、「確かにこの人も彼といっしょだった。この人もガリラヤ人だから。」と言い張った。 \v 60 しかしペテロは、「あなたの言うことは私にはわかりません。」と言った。それといっしょに、彼がまだ言い終えないうちに、鶏が鳴いた。 \v 61 主が振り向いてペテロを見つめられた。ペテロは、「きょう、鶏が鳴くまでに、あなたは、三度わたしを知らないと言う。」と言われた主のおことばを思い出した。 \v 62 彼は、外に出て、激しく泣いた。 \p \v 63 さて、イエスの監視人どもは、イエスをからかい、むちでたたいた。 \v 64 そして目隠しをして、「言い当ててみろ。今たたいたのはだれか。」と聞いたりした。 \v 65 また、そのほかさまざまな悪口をイエスに浴びせた。 \p \v 66 夜が明けると、民の長老会、それに祭司長、律法学者たちが、集まった。彼らはイエスを議会に連れ出し、 \v 67 こう言った。「あなたがキリストなら、そうだと言いなさい。」しかしイエスは言われた。「わたしが言っても、あなたがたは決して信じないでしょうし、 \v 68 わたしが尋ねても、あなたがたは決して答えないでしょう。 \v 69 しかし今から後、人の子は、神の大能の右の座に着きます。」 \v 70 彼らはみなで言った。「ではあなたは神の子ですか。」すると、イエスは彼らに「あなたがたの言うとおり、わたしはそれです。」と言われた。 \v 71 すると彼らは「これでもまだ証人が必要でしょうか。私たち自身が彼の口から直接それを聞いたのだから。」と言った。 \c 23 \p \v 1 そこで、彼らは全員が立ち上がり、イエスをピラトのもとに連れて行った。 \v 2 そしてイエスについて訴え始めた。彼らは言った。「この人はわが国民を惑わし、カイザルに税金を納めることを禁じ、自分は王キリストだと言っていることがわかりました。」 \v 3 するとピラトはイエスに、「あなたは、ユダヤ人の王ですか。」と尋ねた。イエスは答えて、「そのとおりです。」と言われた。 \v 4 ピラトは祭司長たちや群衆に、「この人には何の罪も見つからない。」と言った。 \v 5 しかし彼らはあくまで言い張って、「この人は、ガリラヤからここまで、ユダヤ全土で教えながら、この民を扇動しているのです。」と言った。 \v 6 それを聞いたピラトは、この人はガリラヤ人かと尋ねて、 \v 7 ヘロデの支配下にあるとわかると、イエスをヘロデのところに送った。ヘロデもそのころエルサレムにいたからである。 \p \v 8 ヘロデはイエスを見ると非常に喜んだ。ずっと前からイエスのことを聞いていたので、イエスに会いたいと思っていたし、イエスの行なう何かの奇蹟を見たいと考えていたからである。 \v 9 それで、いろいろと質問したが、イエスは彼に何もお答えにならなかった。 \v 10 祭司長たちと律法学者たちは立って、イエスを激しく訴えていた。 \v 11 ヘロデは、自分の兵士たちといっしょにイエスを侮辱したり嘲弄したりしたあげく、はでな衣を着せて、ピラトに送り返した。 \v 12 この日、ヘロデとピラトは仲よくなった。それまでは互いに敵対していたのである。 \p \v 13 ピラトは祭司長たちと指導者たちと民衆とを呼び集め、 \v 14 こう言った。「あなたがたは、この人を、民衆を惑わす者として、私のところに連れて来たけれども、私があなたがたの前で取り調べたところ、あなたがたが訴えているような罪は別に何も見つかりません。 \v 15 ヘロデとても同じです。彼は私たちにこの人を送り返しました。見なさい。この人は、死罪に当たることは、何一つしていません。 \v 16 だから私は、懲らしめたうえで、釈放します。」 \v 17-18 しかし彼らは、声をそろえて叫んだ。「この人を除け。バラバを釈放しろ。」 \v 19 バラバとは、都に起こった暴動と人殺しのかどで、牢にはいっていた者である。 \v 20 ピラトは、イエスを釈放しようと思って、彼らに、もう一度呼びかけた。 \v 21 しかし、彼らは叫び続けて、「十字架だ。十字架につけろ。」と言った。 \v 22 しかしピラトは三度目に彼らにこう言った。「あの人がどんな悪いことをしたというのか。あの人には、死に当たる罪は、何も見つかりません。だから私は、懲らしめたうえで、釈放します。」 \v 23 ところが、彼らはあくまで主張し続け、十字架につけるよう大声で要求した。そしてついにその声が勝った。 \v 24 ピラトは、彼らの要求どおりにすることを宣告した。 \v 25 すなわち、暴動と人殺しのかどで牢にはいっていた男を願いどおりに釈放し、イエスを彼らに引き渡して好きなようにさせた。 \p \v 26 彼らは、イエスを引いて行く途中、いなかから出て来たシモンというクレネ人をつかまえ、この人に十字架を負わせてイエスのうしろから運ばせた。 \p \v 27 大ぜいの民衆やイエスのことを嘆き悲しむ女たちの群れが、イエスのあとについて行った。 \v 28 しかしイエスは、女たちのほうに向いて、こう言われた。「エルサレムの娘たち。わたしのことで泣いてはいけない。むしろ自分自身と、自分の子どもたちのことのために泣きなさい。 \v 29 なぜなら人々が、『不妊の女、子を産んだことのない胎、飲ませたことのない乳房は、幸いだ。』と言う日が来るのですから。 \v 30 そのとき、人々は山に向かって、『われわれの上に倒れかかってくれ。』と言い、丘に向かって、『われわれをおおってくれ。』と言い始めます。 \v 31 彼らが生木にこのようなことをするのなら、枯れ木には、いったい、何が起こるでしょう。」 \p \v 32 ほかにもふたりの犯罪人が、イエスとともに死刑にされるために、引かれて行った。 \p \v 33 「どくろ」と呼ばれている所に来ると、そこで彼らは、イエスと犯罪人とを十字架につけた。犯罪人のひとりは右に、ひとりは左に。 \v 34 そのとき、イエスはこう言われた。「父よ。彼らをお赦しください。彼らは、何をしているのか自分でわからないのです。」彼らは、くじを引いて、イエスの着物を分けた。 \v 35 民衆はそばに立ってながめていた。指導者たちもあざ笑って言った。「あれは他人を救った。もし、神のキリストで、選ばれた者なら、自分を救ってみろ。」 \v 36 兵士たちもイエスをあざけり、そばに寄って来て、酸いぶどう酒を差し出し、 \v 37 「ユダヤ人の王なら、自分を救え。」と言った。 \v 38 「これはユダヤ人の王。」と書いた札もイエスの頭上に掲げてあった。 \p \v 39 十字架にかけられていた犯罪人のひとりはイエスに悪口を言い、「あなたはキリストではないか。自分と私たちを救え。」と言った。 \v 40 ところが、もうひとりのほうが答えて、彼をたしなめて言った。「おまえは神をも恐れないのか。おまえも同じ刑罰を受けているではないか。 \v 41 われわれは、自分のしたことの報いを受けているのだからあたりまえだ。だがこの方は、悪いことは何もしなかったのだ。」 \v 42 そして言った。「イエスさま。あなたの御国の位にお着きになるときには、私を思い出してください。」 \v 43 イエスは、彼に言われた。「まことに、あなたに告げます。あなたはきょう、わたしとともにパラダイスにいます。」 \p \v 44 そのときすでに十二時ごろになっていたが、全地が暗くなって、三時まで続いた。 \v 45 太陽は光を失っていた。また、神殿の幕は真二つに裂けた。 \v 46 イエスは大声で叫んで、言われた。「父よ。わが霊を御手にゆだねます。」こう言って、息を引き取られた。 \v 47 この出来事を見た百人隊長は、神をほめたたえ、「ほんとうに、この人は正しい方であった。」と言った。 \v 48 また、この光景を見に集まっていた群衆もみな、こういういろいろの出来事を見たので、胸をたたいて悲しみながら帰った。 \v 49 しかし、イエスの知人たちと、ガリラヤからイエスについて来ていた女たちとはみな、遠く離れて立ち、これらのことを見ていた。 \p \v 50 さてここに、ヨセフという、議員のひとりで、りっぱな、正しい人がいた。 \v 51 この人は議員たちの計画や行動には同意しなかった。彼は、アリマタヤというユダヤ人の町の人で、神の国を待ち望んでいた。 \v 52 この人が、ピラトのところに行って、イエスのからだの下げ渡しを願った。 \v 53 それから、イエスを取り降ろして、亜麻布で包み、そして、まだだれをも葬ったことのない、岩に掘られた墓にイエスを納めた。 \v 54 この日は準備の日で、もう安息日が始まろうとしていた。 \v 55 ガリラヤからイエスといっしょに出て来た女たちは、ヨセフについて行って、墓と、イエスのからだの納められる様子を見届けた。 \v 56 そして、戻って来て、香料と香油を用意した。 \p 安息日には、戒めに従って、休んだが、 \c 24 \p \v 1 週の初めの日の明け方早く、女たちは、準備しておいた香料を持って墓に着いた。 \v 2 見ると、石が墓からわきにころがしてあった。 \v 3 はいって見ると、主イエスのからだはなかった。 \v 4 そのため女たちが途方にくれていると、見よ、まばゆいばかりの衣を着たふたりの人が、女たちの近くに来た。 \v 5 恐ろしくなって、地面に顔を伏せていると、その人たちはこう言った。「あなたがたは、なぜ生きている方を死人の中で捜すのですか。 \v 6 ここにはおられません。よみがえられたのです。まだガリラヤにおられたころ、お話しになったことを思い出しなさい。 \v 7 人の子は必ず罪人らの手に引き渡され、十字架につけられ、三日目によみがえらなければならない、と言われたでしょう。」 \v 8 女たちはイエスのみことばを思い出した。 \v 9 そして、墓から戻って、十一弟子とそのほかの人たち全部に、一部始終を報告した。 \v 10 この女たちは、マグダラのマリヤとヨハンナとヤコブの母マリヤとであった。彼女たちといっしょにいたほかの女たちも、このことを使徒たちに話した。 \v 11 ところが使徒たちにはこの話はたわごとと思われたので、彼らは女たちを信用しなかった。 \v 12 [しかしペテロは、立ち上がると走って墓へ行き、かがんでのぞき込んだところ、亜麻布だけがあった。それで、この出来事に驚いて家に帰った。] \p \v 13 ちょうどこの日、ふたりの弟子が、エルサレムから十一キロメートル余り離れたエマオという村に行く途中であった。 \v 14 そして、ふたりでこのいっさいの出来事について話し合っていた。 \v 15 話し合ったり、論じ合ったりしているうちに、イエスご自身が近づいて、彼らとともに道を歩いておられた。 \v 16 しかしふたりの目はさえぎられていて、イエスだとはわからなかった。 \v 17 イエスは彼らに言われた。「歩きながらふたりで話し合っているその話は、何のことですか。」すると、ふたりは暗い顔つきになって、立ち止まった。 \v 18 クレオパというほうが答えて言った。「エルサレムにいながら、近ごろそこで起こった事を、あなただけが知らなかったのですか。」 \v 19 イエスが、「どんな事ですか。」と聞かれると、ふたりは答えた。「ナザレ人イエスのことです。この方は、神とすべての民の前で、行ないにもことばにも力のある預言者でした。 \v 20 それなのに、私たちの祭司長や指導者たちは、この方を引き渡して、死刑に定め、十字架につけたのです。 \v 21 しかし私たちは、この方こそイスラエルを贖ってくださるはずだ、と望みをかけていました。事実、そればかりでなく、その事があってから三日目になりますが、 \v 22 また仲間の女たちが私たちを驚かせました。その女たちは朝早く墓に行ってみましたが、 \v 23 イエスのからだが見当たらないので、戻って来ました。そして御使いたちの幻を見たが、御使いたちがイエスは生きておられると告げた、と言うのです。 \v 24 それで、仲間の何人かが墓に行ってみたのですが、はたして女たちの言ったとおりで、イエスさまは見当たらなかった、というのです。」 \v 25 するとイエスは言われた。「ああ、愚かな人たち。預言者たちの言ったすべてを信じない、心の鈍い人たち。 \v 26 キリストは、必ず、そのような苦しみを受けて、それから、彼の栄光にはいるはずではなかったのですか。」 \v 27 それから、イエスは、モーセおよびすべての預言者から始めて、聖書全体の中で、ご自分について書いてある事がらを彼らに説き明かされた。 \v 28 彼らは目的の村に近づいたが、イエスはまだ先へ行きそうなご様子であった。 \v 29 それで、彼らが、「いっしょにお泊まりください。そろそろ夕刻になりますし、日もおおかた傾きましたから。」と言って無理に願ったので、イエスは彼らといっしょに泊まるために中にはいられた。 \v 30 彼らとともに食卓に着かれると、イエスはパンを取って祝福し、裂いて彼らに渡された。 \v 31 それで、彼らの目が開かれ、イエスだとわかった。するとイエスは、彼らには見えなくなった。 \v 32 そこでふたりは話し合った。「道々お話しになっている間も、聖書を説明してくださった間も、私たちの心はうちに燃えていたではないか。」 \v 33 すぐさまふたりは立って、エルサレムに戻ってみると、十一使徒とその仲間が集まって、 \v 34 「ほんとうに主はよみがえって、シモンにお姿を現わされた。」と言っていた。 \v 35 彼らも、道であったいろいろなことや、パンを裂かれたときにイエスだとわかった次第を話した。 \p \v 36 これらのことを話している間に、イエスご自身が彼らの真中に立たれた。 \v 37 彼らは驚き恐れて、霊を見ているのだと思った。 \v 38 すると、イエスは言われた。「なぜ取り乱しているのですか。どうして心に疑いを起こすのですか。 \v 39 わたしの手やわたしの足を見なさい。まさしくわたしです。わたしにさわって、よく見なさい。霊ならこんな肉や骨はありません。わたしは持っています。」 \v 40-41 それでも、彼らは、うれしさのあまりまだ信じられず、不思議がっているので、イエスは、「ここに何か食べ物がありますか。」と言われた。 \v 42 それで、焼いた魚を一切れ差し上げると、 \v 43 イエスは、彼らの前で、それを取って召し上がった。 \p \v 44 さて、そこでイエスは言われた。「わたしがまだあなたがたといっしょにいたころ、あなたがたに話したことばはこうです。わたしについてモーセの律法と預言者と詩篇とに書いてあることは、必ず全部成就するということでした。」 \v 45 そこで、イエスは、聖書を悟らせるために彼らの心を開いて、 \v 46 こう言われた。「次のように書いてあります。キリストは苦しみを受け、三日目に死人の中からよみがえり、 \v 47 その名によって、罪の赦しを得させる悔い改めが、エルサレムから始まってあらゆる国の人々に宣べ伝えられる。 \v 48 あなたがたは、これらのことの証人です。 \v 49 さあ、わたしは、わたしの父の約束してくださったものをあなたがたに送ります。あなたがたは、いと高き所から力を着せられるまでは、都にとどまっていなさい。」 \p \v 50 それから、イエスは、彼らをベタニヤまで連れて行き、手を上げて祝福された。 \v 51 そして祝福しながら、彼らから離れて行かれた。 \v 52 彼らは、非常な喜びを抱いてエルサレムに帰り、 \v 53 いつも宮にいて神をほめたたえていた。